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素人だから言えることもある

任天堂自らが、映像配信に力を入れてきた(ホームサーバの戦い・第38章)

今年中にWiiに「シアターの間」を作って配信を開始する

 It proにこんな記事があった。
 任天堂岩田聡代表取締役社長は2009年10月27日,日本民間放送連盟主催の第57回民間放送全国大会の講演の中で,Wii向けの有料動画配信サービス「シアターの間」を2009年内に開始すると語った
 課金システムにはWiiで有料ソフトの販売や追加アイテムの販売で利用している小額課金の仕組みを利用する。利用者が見たいコンテンツを検索して探すだけでなく,お奨めコンテンツを推奨する機能も用意する。月額課金などの定額制ではなく,コンテンツごとの都度課金のサービスとして提供する。
 「任天堂の売り上げの8割以上が海外からのものであることが示すように,ゲーム,アニメ,映像などの日本のクリエイティブは海外で受け入れられる」と語り,将来的にはシアターの間で海外向けの映像配信も検討していくという。また,「全国の放送事業者が過去に製作したアーカイブの配信も可能で,興味のある事業者はぜひコンタクトして欲しい」と,放送事業者に積極的な参加を呼びかけた。
 講演では,2009年5月に広告モデルで無料提供を開始した動画配信サービス「Wiiの間」の利用状況についても触れた。現状について「手ごたえはあるが未熟」と表現し,10月26日時点の利用者が93万世帯,248万人であると語った。(任天堂がWii向け有料動画配信サービス「シアターの間」を年内開始,放送事業者に積極的な参加を呼びかけ)
Wiiを持っていない読者は、「11月よりPS3に映画配信の時代来る(ホームサーバの戦い・第37章)」を読んで、PS3に対抗して任天堂もいよいよ映像配信を行うのかと勘違いしているかもしれない。間違えてはいけない、2009年1月より映像配信は既に行われているのだ。「みんなのシアターWii」という動画プレーヤーソフトを通して。

だが、この映像配信を手がけているのは、「富士ソフト」という任天堂とはまったく別の会社である。(任天堂がWiiで映像配信を始める理由(ホームサーバの戦い・第32章) )

 そして、「任天堂“驚き”を生む方程式」(井上理著/日本経済新聞出版社)の中で、
 岩田はWiiの発売前、「テレビに付いている、すぐ起動する、拡張性がある、ネットにつながっている」というコンセプトが頭の中でつながった時、ハード開発を統括する竹田に、思わずこう言ったことがある。
「竹田さん、これはテレビと家族とゲームとインターネットを変えるものですよね
 任天堂は単なる映像配信は手がけない。が、ゲーム的な要素が絡んだ映像配信であれば、自ら乗り出すし、他社が手がけるのであれば、単なる映像配信だってカラオケだって認める。ネット上で展開されているすべてのサービスについて、同様のことが言える。
 つまり、それが実用ではなく娯楽と捉えられるものであれば、ビデオゲームの敵にならないことであれば、どんなサービスも、どんなコンテンツもWiiの商材と成り得るのだ。岩田は言う

「僕らは既に、ゲームというものが何なんだということに関して、あまり狭く考える必要はないんじゃないかというところに話がきている。何か人間が入力して、何か返ってきて面白かったら、それは僕らの仕事としていいじゃないですか」(井上理著「任天堂“驚き”を生む方程式」日本経済新聞出版社)
 岩田社長は、Wiiを開発するとき、ゲームに関するサービスはどんなサービスも、どんなコンテンツもWiiの商材と成り得ると捉えている。だが、一方では、任天堂は単なる映像配信は手がけない。が、ゲーム的な要素が絡んだ映像配信であれば、自ら乗り出すし、他社が手がけるのであれば、単なる映像配信だってカラオケだって認める。とも言っている。つまり、今回の映像配信では、すでに「富士ソフト」という他社が手がけているのだ。いつの間にか、冒頭の岩田社長の発言は、この許容範囲が大きくなっているようにも見えてくる。現在、「みんなのシアターWii」を手がけている富士ソフトにとってたまったものではない。

 「みんなのシアターWii」が始まるときの富士ソフトの記事

 動画の配信は、富士ソフトが開発した動画プレーヤー「ULEXIT(ウレキサイト)」をみんなのシアターWiiに搭載し、スムーズな動画の再生を実現したという。また、配信サーバーは同社が従来から提供している「FSStream」をWii用にカスタマイズし、より安定した映像を効率的に配信できるとした。
(中略)
 富士ソフトの白石晴久代表取締役社長は、「B2Bの富士ソフトがなぜコンシューマ事業なのか、と思われるかもしれないが、みんなのシアターWiiは戦略的にも非常に重要」とコメント。「当社は組み込み系の映像処理技術が要素技術として確立しており、自社でのオリジナルプロジェクトを作りたいと考えていた」とし、「国内で700万台以上を販売し、その4〜5割がインターネット接続しているというWii」に着目した」との経緯を説明。「WiiのCPUは数年前のPCレベルで、通信時の帯域も1〜2Mbpsという狭い帯域幅で高画質を出せるところが当社の映像処理技術の強み」と自信を見せた。 (富士ソフト、「みんなのシアターWii」を2009年1月27日に開始 手塚アニメや世界名作劇場、プロジェクトXなど配信作品公開)
 もちろん、詳しい説明がないので想像でしかないが、3つの方策が考えられる。(1)もし、「シアターの間」を作り、任天堂自ら映像配信を手がけるとしたら、「みんなのシアターWii」と2本の映像配信が同時に走ることになる。2本走るとなれば、そのすみわけはどうなるのか。混乱は起きないのか。(2)それとも、富士ソフト」の「みんなのシアターWii」が名前を変えて「シアターの間」となるのか。だが、それではわざわざ宣言した意味がないであろう。(3)それともみんなのシアターWii」が閉鎖されるのか。そうなると、「みんなのシアターWii」はただの試験期間となる。

 今回の岩田社長の発言は、一歩間違えば、関係者に混乱を招きかねない現実を浮かび上がらせる。
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