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素人だから言えることもある

アップルのホームサーバ計画(ホームサーバの戦い・第43章)

アップルの30年ロードマップ

 ネットを検索して面白いブログ記事を見つけた。2006〜2007年にCNET Japanでもαブロガーとして「ネット時代のデジタルライフスタイル」を書かれていた中島聡氏のブログ「life is beautiful」の12月3日付けの「アップルの30年ロードマップ」という記事である。中島氏が、元アップルにいた、現在・日本通信の福田尚久氏と出会ったという。
 福田氏は、スティーブ・ジョブズAppleに戻り、Microsoftからの資金調達、iPodのリリース、アップル直営店の展開、という今のAppleの成功の基盤となる「奇跡の復活」を遂げた時期にジョブズの側近として活躍した人。
 彼に言わせると、今のAppleのビジネス戦略は、倒産寸前だった97年当時に作った「30年ロードマップ」に書かれた通りのシナリオを描いているという。(アップルの30年ロードマップ)
 そのロードマップとは、
映像・画像・音楽・書籍・ゲームなどのあらゆるコンテンツがデジタル化され、同時に通信コストが急激に下がる中、その手のコンテンツを制作・流通・消費するシーンで使われるデバイスやツールは、従来のアナログなものとは全く異なるソフトウェア技術を駆使したデジタルなものになる。アップルはそこに必要なIP・ソフトウェア・デバイス・サービス・ソリューションを提供するデジタル時代の覇者となる」(アップルの30年ロードマップ)
 僕も、「ホームサーバの戦いシリーズ」では、アップルについていろいろととりあげた。

Apple TVの衝撃 (家電屋VSコンピュータ屋、ホームサーバの戦い・第2章)
iPhoneはやがてネットサーバーの端末になる(ホームサーバの戦い・第14章)
いよいよPS3がアップル、Googleに反撃。 (ホームサーバの戦い・第15章)
iPhoneは日本に何をもたらす?(ホームサーバの戦い・第17章)
アップルはなぜ、パソコンをケータイにしたか(ホームサーバの戦い・第18章)
アメリカでPS3の逆襲が始まった(ホームサーバの戦い・第19章)
モバイルインターネットはPCを救う?(ホームサーバの戦い・第21章)
iPhoneのゲーム機化とPSPのケータイ化(ホームサーバの戦い・第25章)
魔法の杖と携帯端末(ホームサーバの戦い・第31章)
アップル、iPhone・iPodで携帯ゲーム機戦争参加を宣言?(ホームサーバの戦い・第36章)


 このように見てくると、アップルの計画とソニーの計画が次第にダブってくるのが見て取れる。たとえば、2010年に始まるソニーのソニーオンラインサービス(仮)。

 ソニーの平井一夫執行役EVP兼ソニー・コンピュータエンタテインメント社長は20日、ロイターなどとのグループインタビューで、ネットワークを通じて映画やゲームなどを販売するサービスを2010年から開始する意向を示した。
 ソニーは19日の経営説明会でネットワークを通じてソフトを販売するサービスを拡充する方針を表明した。現在はゲーム機だけが対応しているが、テレビ、パソコン、携帯端末もネットワーク対応機器に拡大し、映画やゲーム、音楽、書籍などを提供する「ソニーオンラインサービス(仮称)」を立ち上げる計画。2012年度末までにネットワーク対応機器は3億5000万台への拡大を目指す。2012年度までにネットワークサービス全体の売り上げ規模を年間3000億円にする目標だ。(ソニー、映画・音楽などオンラインサービス開始へ=平井EVP:ロイター2009/11/20)(ハリー・ポッターがWiiとPS3で配信された日(ホームサーバの戦い・第40章))
 ホームサーバの戦いシリーズでは、書籍については着目していなかったが、ロイターでは、アマゾンの「キンドル」に対抗すべき「リーダー」を世界で40%の普及率を目指すという。つまり、アップルのロードマップはそのままソニーの計画と重なる。

アップルのデバイス機

 当然ながら、iPhoneのような携帯端末やApple TVのようなデバイスは存在しているが、書籍やPS3に対応する据え置きゲーム機は存在していない。中島氏は、ロードマップから、これらの機器もやがて登場するだろうという。
 次に言えるのは、ある時点でAppleが書籍・雑誌のデジタル配信ビジネスに本気で出て来ることがほぼ確実なこと。ちまたでは、AppleタブレットPCを出すかどうかが毎年の様に話題になるが、このロードマップを考えれば、Appleがタブレット型のパソコンを「タブレットPC」として出すとは考えられない。そうではなくて、「デジタルで配信された書籍・雑誌を読むのに最適なデバイスは何か?」と考え、それに最適なデバイスをハードもソフトもサービスも含めて設計し、コンテンツ流通の仕組みと一緒に提供するのがAppleである
(中略)
そしてApple社内でもそろそろ真剣に検討しはじめていると容易に想像できるのが、PS3/Wii/Xbox360に対抗する据え置き型のゲーム市場。何年後になるかはわからないが、次の世代のApple TVがOS-Xを搭載し、iTunes storeからゲームをダウンロードして遊べるようになる、という可能性は十分にある。もちろん簡単な話ではないので、単にゲーム機能をApple TVに追加しただけでは話にはならないが、「映像を見る」というテレビ本来の役割に革命をもたらす形でApple TVを普及させることに成功すれば、そこに「ゲームを遊ぶ」というシナリオを追加することはそれほど難しくない。(アップルの30年ロードマップ)

ソニーとアップルの競合時代

 中島氏は、
 なんとも皮肉なのは、このロードマップが、出井さんの時代にソニーが掲げていたビジョンと酷似している点。Appleが苦しんでいる時期に、冗談まじりに「ソニーは今のうちにAppleを買収すべき」と言って来た私だが、まさかここまでAppleがコンシューマ・エレクトロニクスの市場に進出するとは正直言って想像もしていなかった。(アップルの30年ロードマップ)
 というが、出井氏は事実、アップルを買収しようとしたことがある。それは、「ジョブズとソニー」に引用した
 92、93年頃のあるリサーチで、ソニーが好きな人とアップルが好きな人はかなり重なっている、という結果が出たことがあります。さっそくアップル社の企業価値を株価評価に基づき算出してみたら、およそ4760億円と出ました。
 アップル買収。その可能性を、VAIO開発前の私はかなり真剣に考えた時期があります。アップルを買収して、コンピュータや携帯電話といったソニーの情報機器すべてを「アップル」というブランドにしよう、と考えたのです。(出井伸之著「迷いと決断」新潮選書)
 また、「PSP goの隠された使命」で引用した2006年の久夛良木氏の言葉もアップルとの競合を意味していた。
【Q】 SCEIのPS3ビジョンで競合するのは、Appleのように見える。
久夛良木氏】 Microsoftよりは直接ビジョンが近いのはAppleだね。でも、競合よりというより、同じところにいて逆に楽しい。
【Q】 でもPS3がコンピュータなら、将来のApple製品と実際に家庭で競合するようになる可能性があるのでは。
久夛良木氏】 確かに、今の時点では競合していないけど、将来はわからない。2007、8年になって、AppleIntelとコラボレーションしている成果が花開いて来ると、当然、狙うのは音楽プレーヤーだけではないだろうから
【Q】 家庭のエンターテイメントコンピュータという領域でぶつかるかもしれない。
久夛良木氏】 うん。ジョブズ氏は、きっとコンピュータが好きなんだと思う。すると、ビジョンが自然に重なる。(後藤弘茂のWeekly海外ニュースビジネスモデルを変革するためのPS3の価格戦略〜SCEI 久夛良木健氏インタビュー(2))
 アップルは、iTunes storeApp storeの成功に自信を深めている。ソニーは、対抗上、PSN(Play Station Network)を活用していくことになる。その仕組みについて書かれた記事があった。
今朝、ソニーの代表者が明らかにしたことによれば、PSPPlayStationに映画や音楽を配信するのと同じインフラを利用して、ゲーム、ビデオ、音楽、そして電子書籍をソニーのデバイスに届けるのだそうユーザーはひとつのIDを使用してSony Online Service(仮称)に接続することが可能です。つまり、今使用中のPSN IDがSony Online Service IDにも使えるということです。
ネットワークはデジタルカメラにも使えるので、撮影した写真やビデオを直接PS3やPSP、もしくはPCへの接続やメモリーカードの使用を必須としない新しいソニーのテレビでシェアすることが可能。
これらのサービスを通して統一化を測られたソニーのブランド力を強化するのでしょう。実現されたならば大きな利益を生むことになり、消費者はソニー製品を購入する時に彼らがどんなサービスを受けることが出来るのかを確実に理解した上で購入できることになります。
Online Serviceがゲームだけでなく、他のデバイスにも対応することになれば、ソニーファンはもっと増えそうです。(ソニーがPSNを越えるサービスを計画中:Kotaku Japan)
 2010年以降の両社の戦いは、家電ショップ内ではなく、インターネット上の戦いになる。
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