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アップル vs ソニー第二弾!今度は朝日新聞と提携して電子書籍分野に(ホームサーバの戦い・第65章)

日本版アップル包囲網

 こんな記事があった。

ソニー、KDDI、朝日新聞 iPadに対抗 電子書籍新会社7月設立

 ソニー、凸版印刷KDDI朝日新聞社の4社は27日、共同出資して電子書籍端末向け配信会社を設立する、と発表した。ソニーは現在欧米で展開している電子書籍端末「リーダー」の国内販売を年内にも開始する計画。配信基盤環境を整備し、リーダー向けデジタルコンテンツ(情報の内容)の充実を図り、米アップルが28日から国内販売する新型多機能情報端末「アイパッド」に対抗する。
 アメリカでは、Google TVを発表したソニー(iPadに対抗!ソニーとグーグルが急接近「Google TV」(ホームサーバの戦い・第63章) 参照)は、今度は日本国内のiPadの対抗策をしたのはなぜか。それは、現状では、iPadのような魅力的なタブレット型デバイスが作れず、iPadに出版業界を引っ掻き回される事を恐れたためであろう。もちろん、ソニーはiPad市場に参入を表明している(ソニーがiPad市場に参入する(ホームサーバの戦い・第52章) )。しかし、さすがに対抗商品はまだ出ていない。また、ソニーとしては、欧米で成功している「リーダー」を、日本で展開するための足がかりとして電子書籍コンテンツの囲い込みを狙っているのだろう。

ソニーはイノベーションのジレンマを抜け出すことができるか

 ソニーは、コンテンツとハードを両方持つ唯一のユニークな企業である。ところが、縦割りで無駄が多く、シナジー効果がなかった。僕は、「イノベーションのジレンマ」とソニーでソニーについていくつかの例を書いている。
(1) 草創期のソニーは、経営者のアイデアや直感で次の製品が決定されていた。トランジスター技術に着目した盛田氏は、その権利を持っていたアメリカのAT&Tに「トランジスターは補聴器ぐらいしか使えない」とか「そんな小さなラジオが売れるわけがない」とは言われたが、結局トランジスターラジオで「ソニー」の名前を世界にとどろかせた。
 ところが、企業が巨大化すると、1経営者や1社員のアイデアに資金を投入することが難しくなる。
 たとえば、平面ブラウン管ベガの成功で酔ってしまったソニーは、プラズマや液晶技術開発に遅れてしまった。またブラウン管の次は有機ELであると見ていたが、初期の計画より時間がかかってしまった。

(2)  ウォークマンは、カセットレコーダーから録音機能を除き、ステレオ機能とヘッドホンをつけるというアイデアから始まった。これは、創業者井深氏の特注であった。世界中にブレイクし、ウォークマン以外のほかのメーカーは偽者扱いされたほどだ。
 ところが、アップルのiPodがブレイクするとソニーは後追いすることすら難しかった。それは、ベータ事件でソフトの大切さを学んだために、SMEを抱えており、著作権問題に対応しなければ製品開発ができなかったからだ。巨大企業になれば、どれほどアイデアが優れていても目配りが必要になってくる。

(3) ソニーがプレイステーションを始めたとき、ゲーム業界はまったく未知の領域だった。
 ソニーは、任天堂に対する不満を調べ、CD-ROMの必要性を各メーカーに説いて回った。つまり、新たな市場を開発したのだ。PSがブレイクして今度は任天堂がWiiを使って今までとまったく違った市場を切り開いた。

 アップルとソニーの差は、個人のアイデアにどれだけ企業のリソースを割けるかである。企業が大きくなればなるほど、反対の声が大きくなり、安全パイばかり選ぶようになる。それでは二番手になれても、トップを取ることは不可能である。

2015年に勝つのはどっちだ

アップルは、2015年にクラウド革命を想定している(2015年にクラウドコンピューティング革命が起こる(ホームサーバの戦い・第60章))。それは、アップルの言う「デジタル時代の覇者」になる事を意味する(iPadによってアップルはデジタル時代の覇者になれるか(ホームサーバの戦い・第50章))。とすると、このホームサーバの戦い自体が2015年に終わる事になる(それともまた新たな戦いが始まるかも?)。つまり、アップルにしてもソニーにしても、2015年が到着点なのだ。


 iPadはアップルの提供するデジタルコンテンツが一つに集約されたものであり、特にPCに触れたことのない人でも楽しめる点で革命的であった。

映像・画像・音楽・書籍・ゲームなどのあらゆるコンテンツがデジタル化され、同時に通信コストが急激に下がる中、その手のコンテンツを制作・流通・消費するシーンで使われるデバイスやツールは、従来のアナログなものとは全く異なるソフトウェア技術を駆使したデジタルなものになる。アップルはそこに必要なIP・ソフトウェア・デバイス・サービス・ソリューションを提供するデジタル時代の覇者となる」(アップルの30年ロードマップ)
ソニーのストリンガー会長もこう語っている。
「コンテンツとエンターテインメントとハードウェアを1つにすることによって、ほかのエレクトロニクス会社が提供できないような体験を提供する」

(中略)

すべてのソニーの中の要素を1つに組み合わせて競争力を高めていく、それで日本の競合他社も、韓国勢とも、マイクロソフトやアップルとも戦っていく機会は大いにあると思っています。(Business Media 誠 過去最大の赤字から立ち直れるか――ソニーの業績修正会見を(ほぼ)完全収録)

 つまり、2015年のクラウド革命までは、総力戦となる。今までそれぞれのデバイスでそれぞれのコンテンツを売ってきたが、もっと便利に簡単にするためには、一つのデバイスに集約したり、一つのソリューションやサービスにまとめた方が便利である。コンテンツを提供する方も、何種類もそのデバイスにあわせたコンテンツを作るよりも、一つにまとめた方がコストがかからない。ホームサーバの戦いとはプラットフォームの戦いでもある。

 アップルが、一気にiPadで世界的に普及を図るのも、それが目的であり、ソニーがGoogle TVや電子書籍に年内のリーダー販売を賭けて、アップルの出端をくじき、新たなプラットフォームを構築する時間を稼いでいるのである。
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