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ソニーのQriocityにアップルの影があった(ホームサーバの戦い・第75章)

 日経ビジネスオンラインに「ジョブズに勝てない“ソニー的”弱点 王者ノキア、トップ交代に透ける携帯最大手の焦燥」という記事があった。タイトルは、アップルとソニーの話のように見えるが、内容はノキアの話だった。その3ページ目に、こんな文章があった。

 アップルが携帯音楽プレーヤー「iPod」の発売以降、ソニーは長年の夢である「ハードとコンテンツの融合」というビジネスモデルの構築で、常に後手に回ってきたからだ。あるソニーの幹部は、「ハードとコンテンツがあっても、それをつなぐ良いソフトをなかなか開発できなかった」と悔しがる。
 ソニーは2005年12月、アップルでスティーブ・ジョブズ氏の右腕として、コンテンツ配信サービス「iTunes」の基礎技術でもある音楽・映像ソフト「QuickTime」の開発などを手掛けたティム・シャーフ氏を引き抜き、失地奪還を目指してきた。その最大の成果が、今年9月初めに発表した、テレビなどのほか、いずれは携帯電話から利用可能になるというクラウド型の音楽・映像配信サービス「Qriocity(キュリオシティ)」である。(ジョブズに勝てない“ソニー的”弱点 王者ノキア、トップ交代に透ける携帯最大手の焦燥)
 そこで、今度は、ティム・シャーフ氏を検索してみる。AV Watchの西田宗千佳氏の「アップルを意識しすぎず冷静に」吉岡オーディオ事業本部長が語る「ウォークマン再生」というコラムがあった。その中で、ティム・シャーフ氏の言葉が出てくる。
 社内ではこんなことが言われているという。「アップルのソフトは昨日今日出来たものではない。失敗の積み重ねの上にある。iTunesだって5年かかったんだ。それが『明日にはできる』なんて勘違いするな。一歩ずつやろう」。
 この言葉は、現在同社でソフトウェア開発担当上級副社長を勤める、ティム・シャーフ氏の口癖だという。シャーフ氏は、アップルでインタラクティブメディア担当副社長を勤め、QuickTimeを作り上げた人物の一人である。アップルを内情を知る人物の言葉であるだけに、追いかけるソニーにとっては重い一言だ。(西田宗千佳の― RandomTracking ―「アップルを意識しすぎず冷静に」吉岡オーディオ事業本部長が語る「ウォークマン再生」)
この言葉を引用した元ソニーマンのMakoto Kawasaki氏のブログには、
「ソフトをなめるな」
ソニーにいたときに何度か僕が口にした言葉です。しかしTimの言葉の方が圧倒的に説得力があります・・・ソニーはハードウェア企業です。ソフトウェアは軽視されていて、またソフトウェアを理解しているマネージャ陣は少ないのです。Timくらいの人間じゃないと理解させることは無理なのかもしれません。(ソフトをなめるな)
と書かれている。ソニーのハード偏重主義がそこに垣間見える。そもそもティム・シャーフ氏を起用した理由は何か。

 2005年12月にIT Mediaニュースにソニー、Appleから幹部引き抜きでソフトウェアの「直感的ルック&フィール」目指すという記事があった。

 米国ソニーは12月22日、新設したソフトウェア開発担当上級副社長にティム・シャーフ氏を指名したと発表した。同氏は執行役EVP兼技術戦略担当である木村敬治氏の配下となる。
 シャーフ氏の前職はApple Computerにおけるインタラクティブメディア担当副社長。AppleQuickTimeプラットフォームにおける開発およびメンテナンスに貢献したという。また、Apple参加前にはデジタルシンセの先駆けとも言えるSynclavierの開発に従事していた。
 シャーフ氏はカリフォルニア州サンノゼに技術者、ビジネス計画立案担当者などから構成される新しいチームを設置し、ソニーの事業部、デザインセンター、製品計画、エンジニアリング、さらに標準化、知的財産、ライセンシング、ビジネス開発といった各部門と強調して作業を行うという。
 シャーフ氏は「新たなマネジメントの取り組みにより、ソニーは水平的な協力とコラボレーションを強化しようとしており、それにはソフトウェア開発も含まれる」としてソニー製品の価値を増すために貢献したいと抱負を述べている。
 ソニーのハワード・ストリンガー会長兼CEOは「ソフトウェアは卓越したソニー製品を作り出すための、明らかに重要な要素であり、相互接続性を確実なものにすることでソニーの製品およびサービスの価値を高めてくれる」と述べている。「ティムの専門技術はソニーのチームに活気を与えてくれるだろう。そして全製品ラインに統一性があり直感的なソニーらしい“ルック&フィール”を開発し、導入するための責任者となってくれる」と述べている。
 木村氏は「当社の製品およびサービスで一貫してスケーラブルなソフトウェアプラットフォームを維持することは現在の世界状況において重要なことだ。これまで分散されていた機能を1つの組織にまとめ、ソニー全体に重要なプラットフォームに提供することがティムに与えられた使命だ」としている。(ソニー、Appleから幹部引き抜きでソフトウェアの「直感的ルック&フィール」目指す
 ティム・シャーフ氏の起用の目的が、ソニーの持つハードとコンテンツをつなぐソフト作りにある。いわば、ソニーのiTunes Store作りにあることが見えてくる。そして、ストリンガー会長がティム・シャーフ氏に重点を置いていることは、2009年11月の日経ビジネスオンラインの記事にもうかがえる。
 ハードウエア事業の利幅の薄さから考えて、同社にとってネット戦略は絶対不可欠だ。4年前にストリンガー氏は、アップルのスティーブ・ジョブズCEOの下で要職を務めていたティム・シャーフ氏を同社から引き抜き、ソフトウエア開発部門の責任者に据えた。また、ハードウエア技術畑の社員からの激しい抵抗を経た後、今年2月に経営体制の見直しを発表し、ソフトウエアも重視する同氏の路線に沿った若手幹部を抜擢した。こうした動きが実を結びつつある。「変化の速さには非常に満足している」とストリンガー氏は話す。(ソニー新戦略はアップルがお手本?ダウンロード販売するオンラインストアを展開へ)
 その1年後、ソニーは、アップルの真似をしていると批判されたとしても、ティム・シャーフ氏の起用によって、Qriocityとして確実に実を結びつつある。
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