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素人だから言えることもある

朝日新聞は、今、何を考えているか・3(ホームサーバの戦い・第79章)

新聞が電子コンテンツに変わった時からホームサーバのテーマになった

この「ホームサーバの戦い」シリーズで、新聞を取り扱うのもおかしいと思われる人がいるかもしれない。もちろん、最初の意図は、ゲーム機による映画配信の話だった。そもそも、ホームサーバというのは、久夛良木健氏の次の言葉からだった。
ネットワークで配信(再配信)可能なコンテンツには、ゲームの他にも、映画・音楽、許諾を受けた放送番組、あるいは個人が撮影した膨大な数の写真や動画などがあるだろう。今後、家庭において「プレイステーション 3」自体がホーム・サーバーとなり、他の携帯機器やネットワーク接続されたデジタル家電機器、さらにはパソコンにも、ゲームや映像や音楽を配信することも可能になる。(久多良木健氏からの手紙、「PS3が創るリアルタイム・コンピューティングの未来」)(家電屋VSコンピュータ屋、ホームサーバーの戦い
2006年11月に語ったその言葉が、現在では、iPad電子書籍が含まれることになるや、新聞・テレビを含むマスメディア業界を震撼させてしまった。したがって、「朝日新聞は、今、何を考えているか」「朝日新聞は、今、何を考えているか・2」も、「ホームサーバの戦い」シリーズに参入したわけである。

秋山社長は、今、何を考えてるか

佐々木俊尚氏のツィッターにこんな文章が載った
うーむたしかにそうかも・・。となると次はダメ企業に転落するか消滅するだけ? /朝日新聞は衰退の4段階「一発逆転の追求」か - ガ島通信 http://t.co/8RkVzC3(http://twitter.com/#!/sasakitoshinao/status/4659243399512065)
そこで、藤代氏のブログを覗いてみる。
朝日新聞は、携帯電話向け情報サイト「 参考ピープル」、CNETJapanの買収、有料コンテンツ事業の「Astand」(WEBRONZA+、法と経済のジャーナル、WEB新書などがある)、凸版印刷やソニーと組んだ電子書籍配信事業に関する会社に取り組んでいます。社内の人に聞いても、記事に書いてあるトーンはあるようで、ネットに異常に期待している節すらあるようです

これはジェームズ・C. コリンズの「ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階」の4段階「一発逆転の追求」にあるのではないかと。

五段階は 第1段階:成功から生まれる傲慢、第2段階:規律なき拡大路線、第3段階:リスクと問題の否認、第4段階:一発逆転の追求、第5段階:屈服と凡庸な企業への転落か消滅、となっています。

つい数年前までは新聞業界は第3段階にあり、朝日新聞も実際には多くの問題を抱えながら、何もないかのように振る舞っていましたが、2009年に初の赤字転落する前後から、給与の見直し、さらには異例の好条件が話題となった早期退職の募集も行っていますが、構造そのものが見直されているわけではありません。新規事業へのリソースは逐次投入で、やる気のある人がサポートを得られず「失敗」(ただし、会社は失敗と認めない)とみなされ、現場が疲弊し、モチベーションが低下する、ということが一部で起きているようです。(朝日新聞は衰退の4段階「一発逆転の追求」か)

これは、現代ビジネスの記事「新聞記者たちの不安を聞きに行く【第二回】 日経新聞記者たちの小さな怒りオレたちの仕事はなくなるのか会社はどうなる」について語っている。朝日新聞のところを引用してみると、
2期連続の赤字に苦しむ朝日新聞も、au携帯電話利用者向けに「EZニュースEX」の配信を始めたが、今夏時点で会員数は約80万人と、目標の10分の1程度にとどまっている。

朝日の中堅記者が言う。

秋山耿太郎社長は新聞作りに興味がなく、ネットの新規事業のことしか頭にありません

この記者は秋山社長が雑誌のインタビューに「ジャーナリズムの側面があまり強くなりすぎると、お客様第一主義が失われがちとなる」「朝日のキラーコンテンツのひとつは『しつもん! ドラえもん』」などと答えるのを見て、愕然としたという。

新聞のネット展開では、記事をバラ売りすることも多いが、この中堅記者は悲観的だ。

「新聞は幕の内弁当のように、政治、経済、スポーツ、文化といろいろな『おかず』を一式にして売ってきた。今のネットビジネスは焼き魚、卵焼きとバラバラに売って、何円単位の商売をしようとしている。これでは管理業務が増えるばかり。

それにネット向けの速報を強化するといって、ニュースリリースを写すような仕事も増えていますが、これならアルバイトで充分。この分野で勝負していたら、記者の仕事なんて年収300万円が精一杯だと思えてきます」(新聞記者たちの不安を聞きに行く【第二回】 日経新聞記者たちの小さな怒りオレたちの仕事はなくなるのか会社はどうなる)

秋山社長については、朝日新聞は、今、何を考えているか・2週刊東洋経済のインタビューを載せたが、実は、載せ切れなかった後半部分に記者たちが驚いた部分が出てくる。
――そうしたシフトの中で、紙の新聞、そして全国の販売網の位置づけは。

紙からデジタルへと舵を切るのでなく、紙もデジタルも、つまり両者の最適な組み合わせを追求していくしかないと考えている。

というのも、朝日新聞の収入の9割が紙の新聞によるものであり、それを支えているのが北は北海道の稚内から、南は奄美大島までの全国販売網であるためだ。過疎地の販売店で後継者がいないようなケースでは、全国紙も地方紙も一つの販売店で売る「合売化」の流れも出ているが、日本列島を貫く太い販売ルートはしっかり維持していきたい。


紙の新聞でも、デジタルでも、生き残っていくために必要なことは同じだと思う。商品力、競争力のあるコンテンツがカギとなるはずだ。ネットの世界はどちらかといえば情緒的なものを含めて雑多な情報があふれている。紙の世界が対抗力を持ちうるとすれば、深い取材をして情報を取ってくること、そして確かなデータに基づいてファクトを示すことに尽きる。そうしたファクトに基づいた論理的な思考、考え方を掲示できることも、紙媒体の特質だと考えている。

深い取材と確かなデータ、そして論理的思考。逆に言えば、そこさえしっかりしていれば、デジタルの世界でも通用する。よい紙面を作ることが、ネット上でも価値ある情報を提供できることにつながる

(中略)

――デジタル時代における朝日新聞の「コアコンピタンス」とは何ですか。

「瓦版」から「新聞」となった明治初めのころの朝日新聞は、さまざまなコンテンツを集めた偉大なポータルサイトだったと思う。もともとの出発は、世俗のネタを中心に発達してきた「小(こ)新聞」だったが、政論を唱える「大(おお)新聞」の要素もミックスし、ありとあらゆる情報が載っている媒体となった。その時代から今に至るまで一貫して変わっていないのが、「お客様第一主義」の考えのはず。ジャーナリズムの側面があまり強くなりすぎると、その点が失われがちとなり、「お高くとまって」「世の中を斜めから見て」などと読者からの反発を招くことにもつながりかねない。

たとえば販売店や読者からの評判が非常にいいコンテンツの中に、朝刊一面の小さなコラム「しつもん!ドラえもん」がある。ジャーナリズムではないが、読者第一の視点からはこうした工夫が欠かせない。

(秋山耿太郎・朝日新聞社社長――デジタル時代でも、創刊時から一貫するお客様第一主義に徹する)

と答えている。記者たちは後半の答えに驚いたのだろう。深い取材と確かなデータと前半で、褒め上げながら、後半で落とす。前半だけで終わっていれば、記者たちの不満は高まらなかったはずだ。

社長であるから、外面を良くしたい気持ちもわかるが、あれもこれも手を出して、現状維持を保とうとしても失敗は目に見えている。巨大戦艦が、小川のせせらぎに突入していくようなもので、船員を小船で分けてコストを下げていかない限り沈没する。まさに第5段階:屈服と凡庸な企業への転落か消滅となる。
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