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地デジ化1か月前(ホームサーバの戦い・第94章)

7月24日の地デジ化を前にいろいろ情報が集まってきた。

7月からのアナログ放送

僕は、昨年末、来年4月からアナログ放送はこうなる?というエントリーを書いている。その中で、4月からの映像は
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になる可能性があると書いた。現状はご承知の通り、そうはなっていない。しかし、そうなってもこのアナログ放送終了計画の通りであれば、7月にはその映像になるはずであった。ところが、6月17日になってこんな映像になることが発表された。
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日本放送協会(NHK)および日本民間放送連盟(民放連)は17日、アナログテレビ放送終了に向けて、7月1日以降の“アナログ放送画面を通じた特別周知”の対応方針をとりまとめ、その内容を発表した。

アナログ放送終了、そして地上デジタル放送の開始は、東北大震災の被災地となった岩手・宮城・福島の東北3県を除く44都道府県で、来月「7月24日」となっている。全国各地のNHK放送局および地上民放テレビ115社は、本年1月24日に地上デジタル推進全国会議が公表した「完全デジタル化最終行動計画」に沿って“アナログ放送画面を通じた特別周知”を行い、7月1日以降の残り24日間でデジタル化対応を呼びかけるとしている。

7月1日以降、アナログ放送において、ブルーバックの「お知らせ画面」を定期的に挿入する。さらに7月1日以降、7月24日正午までの期間は、アナログ放送のテレビ画面の左下に1/9程度の大きさで、「アナログ放送終了まであと○日」等のカウントダウンスーパーを常時表示する。

7月24日正午には、アナログ放送の番組を終了し、ブルーバックの「お知らせ画面」に全面移行、24時まで完全停波する。7月25日午前0時からはアナログテレビは何も映らなくなる(画面は「砂嵐」等の状態になる)。(地デジ化までいよいよ1ヶ月余り……7月1日以降、アナログ放送画面で“特別周知”が開始)

これは、当初考えていたより、オリジナル画面を見やすくなったのでまだいいかもしれない。当初のままだったら、もっと反発を受けていただろう。

地上デジタル化普及率95%

ところで、気になったのは地上デジタル普及率だ。3月10日の総務省地上デジタルテレビ放送に関する浸透度調査によれば、
○調査実施時期 平成22年12月
○調査対象地域 全国47都道府県の全域
○調査対象者 男女15歳以上80歳未満の個人
○調査方法 RDD法によりサンプルを抽出した後、郵送調査を実施
○有効サンプル数 13,109(地上デジタルテレビ放送に関する浸透度調査)
からアンケートを取った結果、
地上デジタルテレビ放送対応受信機の世帯普及率は、受信機普及台数の伸長を反映し、昨年9月に実施した前回調査から増加して約95%となった。(地上デジタルテレビ放送に関する浸透度調査)
となっている。調査方法を見れば、調査対象が80歳以下という問題も見えてくる。
地デジ普及率95%はウソ!?地デジ調査のカラクリという記事があったのでそれを元に調べてみる。

(1)アンケート方法への疑問
サイゾーによれば、週刊ポストでこのアンケート調査の疑問が調べられているという。
完全地デジ化移行は、被災地3県を除き、あと50日足らずで強行される。その根拠は「ポスト」によれば、昨年12月に実施され、今年3月に発表された総務省によるアンケート調査で「地デジ普及率95%」という数字が出たからだが、この数字自体が怪しいというのだ。

第1の問題点は、このアンケート調査では、母集団から約260万もある80歳以上の高齢者世帯が除外されている。

第2に、この調査は、固定電話を持っている人だけに電話をかけ、答えるという返事をもらった人にアンケートを送付していることだ。いまや携帯電話やIP電話保有者が増え、固定電話の普及率は全世帯の35%なのに。

そこで「ポスト」編集部がもろもろ試算してみると、一般家庭のテレビの約30%が地デジ対応ではないとみられるという。また、地デジ対応テレビを持っていても、アンテナをVHFからUHFに交換していない、UHFアンテナの向きを調整する工事をしていないなどの世帯がかなりあると思われるのだ。(「地デジ普及率95%」はウソ!? 総務省アンケートのトリックにポストが斬り込む!)

(2)デジタル受信機台数への疑問
「受信機の普及率」と言うのは「受信機の普及台数」を元に、これまでに販売された受信機が、各世帯に全て平等に行き渡ったと仮定して計算する数字です。

だから、例えば1世帯で地デジ対応テレビを2台持ってるとか、地デジ→地デジでテレビを買い換えた場合は「2世帯に普及した」と考えられてしまうのです。


加えて「受信機の普及台数」はテレビやレコーダー諸々を足し併せた数なのもポイント。1世帯で地デジ対応のテレビとレコーダを持ってると「普及台数2台」なので、これも「2世帯に普及した」という計算になります。(地デジ普及率70%のウソを暴く)

だがこの数字についても「トリック」があると、坂本氏と砂川准教授は指摘する。例えば地デジ対応のテレビに、録画用ハードディスクやSTBが接続されていると、それだけで受信機が3つと数えられてしまうというのだ。そうであれば、STBなどは単体でテレビ放送が見られるわけではないので、単純に「普及率」に入れられるのは疑問が残る。(調査対象から80歳以上を除外 地デジ対応機普及率95%の「真相」)
(3)地デジ機器を持っても使われていないケースもある
総務省の調査は、「RDD法によってサンプル抽出後、郵送調査」というもの。これは電話番号をランダムに発生させ、選ばれた人に郵便で調査票を送って回答してもらうというもの。いわば普通の家庭に対する調査だ。一方で、Gooリサーチはインターネットを使ったアンケートだ。あたり前だが、インターネットを使いこなせる人が対象になっている。こういうリテラシーがある人は、当然ながら地デジ化に関しても前向きだと考えられるから、Gooリサーチの結果は、全世帯の実態よりも高めの数字になると考えていいだろう。それなのに84.8%という低い数字だ。総務省の計画では、今ごろ、95%に迫る普及率でなければならないのだから、地デジ化作戦は、最後の最後にきて、ずいぶんと暗雲が垂れこめてきた。

この総務省の90.3%という数字は、厳密にいえば「地デジ普及率」ではない。正確には「地上デジタルテレビ放送対応受信機の世帯普及率」である。具体的には「地デジテレビ」「地デジ対応録画機」「外付け地デジチューナー」「チューナー内蔵パソコンまたはパソコン用地デジチューナー」「ケーブルテレビ用セットトップボックス」のいずれかを、"持っているかどうか"を尋ねたもので、決して「地デジが見られるか、見ているか」を尋ねたものではない


たとえば、すでに自治体などで、地デジチューナーを配布したとする。しかし、面倒だし、とりあえずはアナログ放送が見られているので、そのチューナーはその辺に起きっぱなしにしているとする。こういう人も「保有」と答えてしまうのだ。

ただ、総務省の調査はけっこうしっかりやっていて、こういう問題もきちんとフォローしている。全員に対して「地デジ放送が視聴できる状態になっているか」「実際に視聴しているか」も尋ねているのだ。すると、地デジ機器を保有している世帯は90.3%だが、実際に視聴できる状態になっている世帯は85.1%、そして実際に視聴している人は78.4%でしかなかった。つまり、全世帯の5.2%の人が「地デジ機器はあるのに、地デジが観られない」状態であり、全世帯の6.7%の人が「地デジは観られるのに、観ない」のだ。

しかも、この総務省の調査は、郵送調査であり、返送してもしなくてもかまわない。その中で返送してくる人は、調査に協力的な人であり、地デジ普及率は高めにでると考えていいだろう。そうすると、総務省の調査が示しているほんとうの「地デジ普及率」は85.1%なのだから、実態は80%程度と考えてもいいのではないだろうか。そうすると、半年後に行われ、高めに数字が出そうなGooリサーチの調査の84.8%という数字にも納得がいくようになる(ただし、Gooリサーチの調査も、地デジテレビの保有率であるので、実際の地デジ普及率はこれより低い可能性がある)。

では、「地デジ機器をもっているのに地デジが観られない」という人は、いったいどういうことなのだろうか。最も多い理由は「アンテナが対応していない」37.1%で、2位が「アンテナ線を接続していない」13.1%だった。つまり、40%以上の人がアンテナの問題を抱えていて、地デジ機器があるのに地デジが観られない状態になっているのだ

これは、最初から懸念された事態だった。総務省やデジタル放送推進協会では、「お使いのUHFアンテナがそのまま使えます。※場合によってアンテナの交換や調整が必要になる場合があります」と、あたかも、アンテナのことは考えなくてもいいかのように誤解するような表現をしているが、実際はかなりの割合でアンテナの交換、調整が必要になるのだ

総務省の調査でも、アンテナについて、「なにもしなかった」というひとは43.0%でしかなく、残りの人はアンテナを新設、調整、あるいは屋内アンテナの新設ということになっている。つまり、半分以上の人は、アンテナをそのままにしておいたら、地デジは観られないのだ。


「地デジ機器があるのに地デジが観られない」という人は、地デジ機器を買ってしまってから、アンテナが対応していないことに気がつき、「うわ!アンテナ交換必要なのか。面倒だなあ。どこに頼んでいいかわからないし。まあ、とりあえずアナログ放送は観られるから、あとで考えよう」ということで、なんとなくずるずると放置してしまっているのだろう
 (56 あと138日の回 - ほんとうの地デジ普及率は80%でしかない)

なお、最後の引用記事は、総務省が普及率90.3%と発表した2010年9月の発表を元にしたものであり、今回の95%とは数字が違うが、調査方法は同一。したがって、今回の発表から、本当に地上デジタルを視聴できる環境にあるかを調べる必要がある。

2011年3月のPDFの10頁に
地上デジタルテレビ放送を視聴できない理由としては、アンテナや分配器が未対応(40.7%)との回答が多くあげられた。また、実際に視聴している世帯の割合は82.2%であった。(地上デジタルテレビ放送に関する浸透度調査)
したがって、2010年9月の発表と今回の2011年3月の発表を比べてみる。なお、2011年の3月の結果が、95%とされているが正確には94.9%なので修正して記載する。

2010年9月

地デジ機器を保有している世帯は90.3%
実際に視聴できる状態になっている世帯は85.1%、
実際に視聴している人は78.4%
つまり、全世帯の5.2%の人が「地デジ機器はあるのに、地デジが観られない」状態であり、全世帯の6.7%の人が「地デジは観られるのに、観ない」のだ。

2011年3月

地デジ機器を保有している世帯は94.9%(+4.6%)
実際に視聴できる状態になっている世帯は90.3%(+5.2%)、
実際に視聴している人は82.2%(+3.8%)
つまり、全世帯の4.6%の人が「地デジ機器はあるのに、地デジが観られない」状態であり、全世帯の8.1%の人が「地デジは観られるのに、観ない」のだ。

数字上だが、地デジ機器の普及と実際に視聴できている世帯がクロスしていないことがわかる。やはり、アンテナ未対応が40%の高確率である。問題なのは、地上デジタル視聴世帯は82.2%なのに、94.9%のデジタル機器保有率でごまかそうとしている実態である。おそらく、総務省はこの結果を元にしてデジタル化に見切り発車するだろう。

被災地のアナログ延長措置

4月18日に総務省はこんな発表をした。
東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手、宮城、福島3県の地上デジタル放送の完全移行時期が、当初の7月24日から最長で1年程度延期されることが18日、分かった。総務省が今月に実施した被災状況調査では、約10万世帯がいまだにテレビを視聴できない状態にあり、あと3カ月で復旧するのは困難と判断した。片山善博総務相は15日の閣議後会見で「週明けには考えをまとめ、必要な法改正案を提出する」と移行延期が避けられない見通しを示唆していた。(被災地、地デジ化1年延期 TVなし10万世帯の早期復旧困難)
ところが5月2日、
岩手、宮城、福島3県の民放局12社の社長らは2日、総務省東北総合通信局(仙台市)で同省幹部と地上デジタル放送の移行延期について意見交換した。

関係者によると、この日の意見交換で各社は、予定通り7月24日に完全移行してほしいと要望。延期になる場合でも、できる限り早期に移行し、アナログ回線継続に伴うコスト負担を最小限に抑えるよう求める声が相次いだという。

地デジ完全移行をめぐって総務省は、東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手、宮城、福島の3県に限り、当初予定の7月24日から最大1年間延期する方針を発表している。
(地デジ延期に反対相次ぐ 被災3県の民放各社)

ということで地元民放が大反対。アナログとデジタルの同時放送は費用が掛かるという。
アナログとデジタルの同時送信による費用負担は重い。被災地の民放幹部は「同時放送を1年間続けるコストは1局当たり2000万〜4000万円」と試算する。震災で広告費は激減しており、「経営がもたない」との嘆きの声も上がる。

技術的な課題も残る。同時放送では、地元の放送局がキー局からデジタル放送で受け取った番組を、アナログ波に置き換える作業が必要。NHK広報局は「不可能ではないが、技術的にはかなり難しい」と話す

また放送局は7月24日の完全移行に向けて、アナログ中継局の設備投資を控えている。機器メーカー側も生産を取りやめるケースが多く、日本民間放送連盟は 「各局ともだましだましで送信機を動かしている状態。7月以降は修理ができずに放送事故が起きる可能性がある」と危惧する。(日々産業新聞地デジ移行3県延期波紋、「同時放送」被災局に負担―携帯用通信に影響も。)

それでも5月10日、
政府は10日、東日本大震災の被害が大きかった岩手、宮城、福島の3県で、地上デジタル放送への移行を当初予定の7月24日から最長で1年延期する電波法の特例法案を閣議決定した。
3県の放送局に対し、7月25日以降も続ける地上アナログ放送にかかる電波利用料の納付を免除。アナログ放送の継続に必要な費用を、他の会社などが支払った電波利用料から助成する仕組みを盛り込んだ。(地デジ延期の特例法案決定 岩手・宮城・福島3県が対象
しかし、もっと安く済む方法があったはずだ。それは、BSを使った地デジ放送。僕は、意外に地デジ崩壊は近いかもしれない(ホームサーバの戦い・第77章)で、
総務省は27日、2011年7月の地上デジタル放送への完全移行時に、アンテナ工事などが間に合わない世帯が、BS(放送衛星)放送経由で地デジ番組を視聴できるようにする緊急対策を講じる方針を固めた。

BSアンテナとBSチューナーが接続されているのが前提となるため、BSアンテナなどを持っていない世帯に対しては別途、対応を検討する。

BS放送経由で視聴できる地デジ番組は、NHKと在京民放キー局のすべてとする。総務省は、デジタル化で電波が届かなくなる山間部など地デジを視聴できない世帯に対し、BS放送経由での視聴を15年3月まで可能とする移行措置を決めている。アンテナ工事が間に合わない世帯についても、同様の対応とする方針だ。総務省は、地デジ工事が間に合わない世帯が申請した場合に限り、BS放送経由で視聴できる地デジ番組にかけている暗号を解除し、アンテナ設置までの「時間稼ぎ」をする方向だ。(2010年10月28日 読売新聞)

という文章を引用している。テレビやアンテナが流された場合は、仕方がないが、報道によれば、最近、仮設住宅には、テレビがついているという。
「これが仮設なのか!?」 被災者用の仮設住宅に中国で驚きの声

東日本大震災の被災地では仮設住宅の建設が始まり、中国でも同ニュースが報じられた。中国メディアの環球時報はこのほど、仮設住宅の建設の様子を写真付きで紹介する記事を掲載した。

記事は、自然災害の多い日本では災害対策システムが充実していると紹介し、「電気、ガス、エアコン付きの仮設住宅100戸には液晶テレビや冷蔵庫、太陽発電システムなどの家電が無償で提供される」と報じた。

記事には中国のインターネットユーザーから、まるで本宅のようだ、これで仮設住宅なのかといった驚きのコメントのほか、これでこそ先進国だといった称賛のコメント、仮設住宅から日中の差を見いだしては汚職官僚を批判するコメントなどが寄せられた。(ヤフーニュース4月6日

これを利用して、BSパラボラアンテナを立てればいいのである。だが、それを実行することは地方民放の存在意義をなくしてしまう。おそらく、東北であれば、民放は1局か2局だ。BSで、東京で流される全民放5局が、1年後にまた1局か2局になってしまうのだ。これほど、存在意義を揺るがす事態はないだろう。池田信夫氏は、新・電波利権でこう書いている。
NHK や民放連は、IP や衛星は「補完的なインフラ」だとして、あくまでも地上波を主とする方針を表明している。これは、キー局の番組を垂れ流して電波料をもらっているだけで制作能力のない大部分の地方民放が、競争にさらされたら困るからである。(池田信夫著「新・電波利権」アゴラブックス/60・61ページ)( 意外に地デジ崩壊は近いかもしれない(ホームサーバの戦い・第77章)
また、こうも言う。
この無駄づかいで地方民放がつぶれるのは自業自得だが、これによる電波の浪費は国民全体の損失だ。BSデジタルを2000年に始めたとき、地上波の放送をすべて衛星に移行しておけば、UHFとVHFの400MHz以上を空けることができ、日本は世界トップの無線ブロードバンド先進国になれたはずだ。これから地方民放が全滅すれば、10年ぐらいかけてそうなるだろう。日本の電波行政の「失われた20年」の代償は大きい。(地デジという壮大な無駄づかい)( 意外に地デジ崩壊は近いかもしれない(ホームサーバの戦い・第77章
ともかく、7月24日にテレビ局は、地デジ化に突っ走るだろう。そのとき、もう一度大きな波乱が起きるのではないだろうか。
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