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素人だから言えることもある

ゲームもテレビも未完成の時代(ホームサーバの戦い・第109章)

パッケージからダウンロードへ

FF13の続編「FF13-2」は、本編FF13のパッケージ売り切り方式と違って、結末はDLC(ダウンロードコンテンツ)へと変わった。そういえば、FF13からPS3とXbox360との同時発売というマルチコンテンツだった。それまでは、FFはPS3専用だった。それは、FFがプリレンダリングムービー主体だったので、Xbox360のようなDVD容量に足らず、PS3のBD(ブルーレイディスク)を使わざるを得なかったからだ。FF13がPS3ではBD1枚だったのに対し、Xbox360ではDVD3枚だったことを覚えていよう。この間に、FFメーカーのスクウェア・エニックスでは何が起こったか。それは、プリレンダリングムービー主体からリアルタイムレンダリングムービー主体に変わったことだ。鳥山ディレクターはこういっているという。
鳥・ディスクはPS3/360版共に一枚。ボリュームダウンしていると思われるかもしれませんが、前作はイベントが動画のシーンもあったのに対して今回は殆どリアルタイムで、ボリュームは前作とほぼ同等、装備も反映されDLCの幅も広がるようになった(ゲーム速報保管庫F1190: PS3/360「ファイナルファンタジーXIII-2」インタビュー後編、野村氏コメントも)
この「装備も反映されDLCの幅も広がるようになった」点については、
(プリレンダリングムービーは)特にRPGなどストーリーにある程度のウェイトがあるゲームに置いては途中で状況を変更したり、装備が違う、パーティーメンバーが違うなどの複数の分岐に対応出来ない場合が多く、ムービーがストーリーに制限をかけてしまったり、ストーリーとムービーが矛盾するなどと言った事態を引き起こしている。前述の一般に成功作と言われる『ファイナルファンタジーVII』についても同様の問題が起こっており、RPGにムービーを乱用する事には否定的な意見も多かった。
一部でプリレンダリング映像を使用しない、ハードウエア能力とプログラミングに因るグラフィックスでの非操作画面をムービーと呼称する場合もある。これはNINTENDO64の『ゼルダの伝説 時のオカリナ』において、ハードウエア上のグラフィックス機能で表現されているキャラクターがデモシーンを展開する際に、非操作になる場面に名づけられた名称である。任天堂はこういった形式を「リアルタイム(で処理を行っている)ムービー(若しくはリアルタイムレンダリングムービー)」、または「インタラクティブムービー」と呼んでいた(現在、一般的に使われる意味の「インタラクティブムービー」とは別)。(ムービー-Wikipedia)
FF13スクウェア・エニックスのCrystal Toolsというグラフィックエンジンが使われている。これは、もともとマルチプラットフォーム対応であった。
Crystal Toolsは,オーサリングツールとライブラリで構成されているのだが,PS3やXbox 360などのほかに,しっかりとPCにも対応している。現在作成中の「ファイナルファンタジーXIII」と「ファイナルファンタジー Versus XIII」,および新作オンラインゲームの開発で,すでに使用されているそうだ。([GDC2008#33]ファイナルファンタジーのために作られたスクエニオリジナルエンジン「Crystal Tools」とは)
それまでは、スクウェア・エニックスでは、
当時のスクウェア・エニックスでは,多くのチームが並行してゲーム開発を行っており,制作環境として見れば非効率的な状況。([GDC2008#33]ファイナルファンタジーのために作られたスクエニオリジナルエンジン「Crystal Tools」とは)
だったのだが、このCrystal Toolsによって、各プラットフォームに対応する基盤を作ったわけだ。ゲームメーカーとしては、それぞれのプラットフォームによって違ったゲームを制作するよりも、HD化による製作費高騰のため、マルチプラットフォーム化が急がれてきた。と同時に、DLCによる課金で、製作費の回収と作品寿命を延ばそうとしているのかもしれない。

ニンテンドーネットワークとソニーエンターテイメントネットワーク

ソフトメーカーがマルチプラットフォーム化を目指しているのに対して、プラットフォームメーカーもネットワーク対応を深めている。例えば、任天堂は、1月末に「ニンテンドーネットワーク」を発表している。岩田社長は、
既に、『マリオカート7』の中では、新しいネットワークサービスの名称として、
ニンテンドーネットワーク」という名称が使われています。
ニンテンドーネットワーク」は、ニンテンドー3DS/Wii U を包含するネットワークプラットフォームです。
これまでの「ニンテンドーWi-Fiコネクション」のような、特定の機能と概念に特化したものではなく、お客様に対して存在するネットワーク経由のさまざまなサービスをニンテンドーネットワークによって結びつけ、一体のものとして提案していくプラットフォームとすることを目指しています。このため、対戦や交流、コンテンツの販売などもニンテンドーネットワークの枠に入っていくことになります。(2012年1月27日(金)経営方針説明会 / 第3四半期決算説明会任天堂株式会社 社長 岩田聡 講演内容全文)
特に、WiiUから「個人アカウント」システムを導入する予定だという。
また、コンテンツ販売という意味では、パッケージソフトのデジタルディストリビューション、いわゆるダウンロード販売も視野に入れています。このことは、ニンテンドー3DSの設計時から考慮しており、仕組みとしては既に用意を終えていますし、Wii Uでも用意をする予定です。ただし、これをいつからスタートするかは、流通のみなさんとの関係に配慮する必要性や、お客様にどのような形で受け入れていただけるのか、そして、お客様がお持ちのSDカードの空き容量など、市場の環境も見極める必要があると思っていますので、現在具体的な時期は決めておりません。ただ、将来の選択肢としては、重要性が高まると考えています。
また、Wii Uにおいては、ニンテンドーネットワークに対応した個人アカウントシステムを導入する予定です。これにより、従来課題となっていた、1台のハードを複数の家族が共有する上での使い勝手が向上するほか、さまざまなサービスやコンテンツを連携できるシステムを実現し、ご提案できると考えています。 今後、自社他社問わず、多くのソフトで、インターネットを活かしたサービスを、ニンテンドーネットワークの名称でお楽しみいただけるよう、積極的な対応を進めていきます。(2012年1月27日(金)経営方針説明会 / 第3四半期決算説明会任天堂株式会社 社長 岩田聡 講演内容全文)
任天堂の機器は個人アカウントシステムを取っておらず、WiiとDSの連携ができなかった。ハリー・ポッターがWiiとPS3で配信された日(ホームサーバの戦い・第40章) で、こんな記事を引用した。
DSiショップにはユーザー登録という仕組みがありません。ユーザー登録が無いので、ダウンロードしたゲームやアプリを他のハードに移動しようと思っても、本人確認をするシステムがないんです。本人確認をするシステムがないのに、どうやって管理をしているのかというと、ユーザーではなく、ハードの方を確認していると思われます。
DSiショップに接続した本体を個別に認識しているんですね。例えば、ニンテンドーポイントプリペイドカードDSiポイントを登録したら、登録した時に接続しているDSiを覚えていて、その本体で接続する限りは登録したDSiポイントを使うことができます。しかし、他のDSiで自分が登録したDSiポイントを利用することはでない、という具合です。
同じように、ダウンロードしたゲームも、ユーザーを確認する仕組みはありませんが、ダウンロードした本体と関連付けされて管理されているということです。よって、新しくDSiLLを購入しても、移動することはできません。DSi同士でも駄目です。ちなみに、同じ本体であれば再ダウンロードは可能です。もちろん、移動の手段としては利用できませんが。(DSiウェアがDSiLLに引継できない訳)
つまり、それぞれの機器にはアカウントがあるが、ユーザー別のアカウントはない。ようやくWiiUになってPSN並みになったわけだ。ところで、ソニーは、SEN(ソニーエンターテイメントネットワーク)というネットワークを始めた。2月8日には、PSNがSENに統一された。今まで、プレイステーションのみに限定されていたコンテンツサービスが、ソニーのすべての商品に拡大されたと考えてもよいのかもしれない。

テレビがネットワークにつながれたとき

ゲーム据え置き機の宿命は、テレビにつながれたことだ。そのテレビが、ネットワークにつながれたらどうなるか。僕は、デジタル化は避けられなかったのかでこんな言葉を引用した。
インターネットや関連サービスにアクセスするには、これから先もテレビではなくコンピュータがその第一の手段だと、コンピュータ企業は主張している。数百万の米国民にとってそれは本当のことだろうが、パーソナルコンピュータが登場して15年(2001年当時)、米国の半数近い家庭にパソコンが普及した現在でも、それらすべての家庭において、コンピュータが快適に使いこなされているわけではない。使いやすいように次々と改善されてきてはいても、相変わらずパソコンは難しい機械のままだ。

同時に、米国の家庭の99パーセント以上はテレビを持ち、その使い方を知らない人はほとんどいない。したがって多くの人にとって、デジタルテレビは「情報スーパーハイウェイ」、すなわちWWW、電子メール、その他すべてのものへの簡単で自然な入り口となることが予想できる。

これらのすべては、もう一つのあまり好ましくない変化とともにやってくる。間もなくテレビとコンピュータの明確な区別はぼやけてくるだろう。それに伴って、コンピュータ世界の病気がテレビ産業にも押し寄せてくるだろう。今までのテレビは、8年から10年、あるいはもっと使うつもりで買われている。そして実際にそのくらい使えた。なんといってもテレビ自体は、30年にもわたってほとんど変わらなかったのだ。しかし、今やテレビはコンピュータのようなものとなり、ほんの2年前に買ったパソコンがすぐに技術的にどうしようもなく古臭いものになるように、テレビも、すぐに古いものとなっていくだろう。新しいモデルはより速いチップ、より大きなメモリ、より高性能なモデム、より拡張性が高いオプションがつくようになるからだ。

今から3年から5年のうちに確実に、最初のデジタルHDTVの驚くほどシャープな画面上で、株価情報を見たり、ホームショッピングをしたり、ニュースやNCAAバスケットボール選手権を、6チャンネルのサラウンド音声とともに見ることができるだろう。しかし、メーカーがビデオ電話やインタラクティブなポルノチャンネルを組み込んだ新しいモデルを提供しているときに、あなたは自分の古いモデルで満足できるだろうか。

そして、その最先端のテレビ受像機は数年後、窓にかけられるフラットパネルディスプレイや、好みの番組を即座に選べるような新しいモデルが発表されたときに、やはり古いものとなってしまう。

また数年後に、立体的なビデオゲームや、今はまだ考え付かないようなとてつもないサービスを提供する次世代テレビが出たとき、それまで最新モデルだった受像機の所有者は、自分のテレビに満足できるだろうか・・・・(ジョエル・ブリンクリー著/浜野保樹・服部桂共訳「デジタルテレビ日米戦争−国家と業界のエゴが『世界標準』を生む構図」アスキー

これから流行ると言われるスマートテレビは、パソコンとテレビが融合したものだ。今のテレビでも、ネットにつながるのは当たり前になっている。かつてのテレビは、ほとんど売り切りだった。これは、ゲームがパッケージの売り切りだったように。

ユーザー・エクスペリエンスの時代でも書いたことだが、この売り切りのテレビが売れなくなった。そうなると、他のメーカーのテレビと違うものを作っていかなければならない。それが、パソコンとの融合だった。そしてそれは「コンピュータ世界の病気」とともにやってくる。

一面では、「タブレットがテレビになる時」で指摘したテレビの持つ受け身性の問題である。そして、今回のエントリーでは、コンピュータ側の問題を指摘できる。それは、絶えずバージョンアップしなければならないという未完成の問題だ。

売り切りのテレビは、少なくともその時点で最高の技術を駆使した完成品だった。ゲームもそうだ。ところが、ネットワークにつながれると、ショップに行かずにバージョンアップできる。発売日に間に合わなければ後からアップロードで対応させることができるのだ。言い換えれば、テレビもゲームもショップでは未完成品が発売されていることになる。
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