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素人だから言えることもある

ナスネは第二のロケフリになるか(ホームサーバの戦い・第119章)

Slingbox PRO-HDの現在

前項「ソニーはナスネによってデジタルハブの夢を見るか(ホームサーバの戦い・第118章) 」で、関連を検索しているうちに、意外にロケフリに対しての要望が高いことが分かった。確かに、スマートフォンで予約が可能になるより、インターネットを通して屋外で視聴したいのだ。そこで、なぜ、ロケーションフリーは生産完了になったかでも触れた唯一のロケフリのHD版であるSlingbox PRO-HDの現状を調べてみた。

実は、Slingbox PRO-HDの端子を調べてみると、映像出力端子がS端子コンポーネント端子しかないことが分かった。どちらもアナログであり、デジタルのHDMI端子はない。Slingbox Fanというブログによれば、

Blu-ray Discの著作権保護技術「AACS」の規定により、2011年1月以降に製造されるBlu-ray Discプレーヤー/レコーダのD端子によるアナログビデオ出力が SD 解像度(480i)に制限される。

アナログビデオ出力制限のスケジュールによると、2010年12月31日以前に発売された製品については「HDビデオ出力可」(販売は2011年12月31日まで)。2011年1月以降〜2013年12月31日の製品は「480iに制限」。そして、2014年1月以降の製品は「アナログビデオ出力禁止」。


具体的にD端子への規制は、 Image Constraint Token (ITC)という仕組みを使う。これは、コンテンツに設定される値で、 ITC が「0」に設定されたソフトや番組を再生しようとすると、D1相当の標準画質にダウンコンバートされ出力される。

(中略)

現在は、「AACS」で保護された映像コンテンツが制限されるため、規制は上記のようになる。すなわち、2014年1月以降でも Slingbox への出力に問題無いように見える。では、この規制で Slingbox は何か影響があるのだろうか?

まず、Blu-ray 等、アナログへハイビジョンを出力しないケースが出てくるということは、今後「D端子」および「コンポーネント」が TV そして Blu-ray/DVDレコーダから消えていくことを意味している。すると、Slingbox の HD 入力端子は「コンポーネント」しかないので、新しい機器との接続で Slingbox の「HD」出力は不可能となる。結果として、PRO-HD は無くなり、SOLO のように「SD」出力される機器のみとなるだろう。

では、いずれは HDMI端子を持った Slingbox PRO-HD が出てくるのだろうか?おそらく期待をしても、多分それは無いように思われる。それは現在まで Slingbox、Vulkano、ロケフリHDMI端子が付いていなかったことが全てを物語っている。映像の規制とはそれ程厳しいものなのか。(アナログハイビジョン規制におけるSlingboxへの影響)

とHD出力は不可能らしい。ところで、なぜ、ロケーションフリーは生産完了になったかにおいて、最後のロケーションフリー発売が2006年11月と書かれているのを注目したい。

DTCP-IPとDLNA

実は、この11月、プレイステーション3が発売されていたのだ。Wikipediaのメディアサーバーの項目にこんなことが書かれていた。
音楽・映像・画像の視聴・閲覧機能やネットワーク機能のリモートプレイにより、家庭内LANもしくは家庭外インターネット環境下でメディアサーバーとして利用できる。USBストレージも利用可能だがNTFSには非対応。DLNAクライアントになることも可能でありパソコンなどのDLNAサーバー上にある映像や動画、音楽データを再生することもできる。本来DTCP-IPに対応していなかったため著作権保護されたデジタル放送の再生などには非対応であったが、バージョン3.00からDTCP-IPへ対応しており、対応するメディアサーバーを検出したときのみ、XMB左側にある設定メニューにDTCP-IP接続を有効にする項目が現れる(対応メディアサーバーが検出されないときは設定項目が隠れている)。(プレイステーション3 - Wikipedia)
ここに書かれているDTCP-IPとかDLNAとかいう文字をどこかで見たことがあるだろうか。前項「ソニーはナスネによってデジタルハブの夢を見るか(ホームサーバの戦い・第118章) 」のナスネの説明にもこうある。
nasneには、Ethernet端子と地上/BS/110度CSデジタルチューナ各1基、500GB HDDが内蔵されている。録画モードは「DR」と「3倍」の2種類で、録画番組のDTCP-IP moveに対応。製品に同梱されている、PS3用アプリ「torne」(ver4.0)をPS3にインストールし、PS3からLAN経由でnasneを制御できる。(SCE、PS3やVitaと連携する新デジタルレコーダ「nasne」 −torneで制御。3波チューナ/500GB内蔵で16,980円)
ほかの記事では、
またnasneはDLNAサーバー搭載ストレージとしても使用でき、動画や音楽、画像などを保存し、DLNAで配信できる。ただし、画像や音楽などのプライベートコンテンツのDLNA配信は、ナスネシステムソフトウェアVer.1.50より対応予定となる。(SCE、PS3やPS Vita/VAIOなどと連携するネットワークレコーダー/NAS「nasne」を発売)
そこでこれらの言葉を調べてみる。このDLNAとは、
DLNA(Digital Living Network Allience)
DLNAはAV家電機器や、パソコン・周辺機器、モバイル機器などのメーカーにより結成された業界団体です。 各社の製品が互いに互換性を持って、ネットワーク上で容易に相互接続できるためのガイドライン (業界標準)を作成しています。 ガイドラインでは、機器間で通信するための手順(UPnPなどのプロトコル)、 ユーザインターフェース、コンテンツのフォーマット(MPEG2、JPEG、等々)などを定めており、 このガイドラインに従っている機器間はメーカーや機種が異なっていても簡単にお互いを認識することができます。

ガイドラインは2004年6月にVer.1.0(DLNA1.0)が発表され、2006年3月にはモバイル機器 (デジタルカメラやPDA)やプリンタも対象とし、更にDTCP-IPにも対応したVer.1.5(DLNA1.5)が発表されました。 また、2009年にはVer.2.0(DLNA2.0)が予定されています。 製品としては、DLNA1.0か、あるいはDLNA1.5に対応しているものが混在していますが、 DLNA1.5対応の製品が増えています。(LANHOME技術紹介・解説)

そしてDTCP-IPとは、
DTCP-IP(Digital Transmission Content Protection over Internet Protocol)
DTCP-IPは、コンテンツの著作権を保護するための方式(技術)の1つです。 ビデオカメラなどのAV機器とパソコン間の接続には、IEEE1394という接続方式が用いられ、 DTCP-1394という保護技術が採用されていますが、 このDTCPの考え方を更にIPネットワークに対して採用したものです。

DTCP-IPでは、コンテンツを暗号化してIPネットワーク上に送信し、更に、 ホームネットワーク(家庭内LAN)から外部のインターネット上に出ないような工夫をして、 コンテンツの著作権を保護しています。 DLNAガイドラインVer.1.5(DLNA1.5)では、このDTCP-IPを著作権保護技術として採用しています。

電波産業会(通称ARIB)が2005年9月に、 DTCP-IPを用いてデジタル放送をネットワーク上に配信することを認可したので、 地上デジタル放送やBSデジタル放送の動画コンテンツをホームネットワーク上でも利用できる製品が発売されるようになりました。

DLNADTCP-IPに対応したパソコン、BD・DVD・HDDレコーダ、デジタルTV等で録画したデジタル放送(地デジ、 BS、CS)の番組は、家庭内LANを介して接続された離れた部屋のDLNADTCP-IP対応のネットワークメディアプレーヤやデジタルTVで再生することができます。(LANHOME技術紹介・解説)

家電メーカーの中でも、ソニーは積極的に著作権保護に取り組んできたというのは意外だろうか。ロケーションフリー自体は、違法でもなんでもない。あくまでも誰かを介したために問題になったのである。ソニーが著作権保護を謳うのもロケーションフリーの事件から学んだのではないだろうか。
ソニーはホームネットワークを介した機器間相互接続に早くから取り組んできたメーカーの1社であり、 「ルームリンク」という名称でホームネットワークでの利用を表しています。 ソニーはDLNA(Digital Living Network Alliance)のコアメンバーであり、 このアライアンスが策定したDLNAガイドラインをルームリンクに取り込んできました。

BRAVIAだけでなく、BD・DVDレコーダやネットオーディオ機器、 パソコン(VAIO)、ゲーム機(PS3)などのルームリンク対応(DLNA対応)製品を多数取り揃えており、 相互に各種コンテンツを利用しあえるようになっています。(ソニーBRAVIA(ブラビア)の使い方)

とあるように。

iCloudの盲点の理由

AppBankに「ビジネスに使えるiPhoneアプリ特集」に解説があり、iCloud の盲点という項目がある。
iCloud には扱えないデータもあります。それはユーザーが iTunes に取り込んで iPhone/iPad に同期した楽曲や動画です。

何故扱えないのかというと、現在の著作権制度ではそれぞれの楽曲や動画の著作権者の許可なしに、これらのデータを Apple が管理することはできないからです。


ですから、自分で取り込んだ楽曲や動画を iPhone/iPad に入れるには Dock ケーブルを使うか、iOS 5 の Wi-Fi シンクを使って iTunes と同期する必要があります。(iCloud解説。概要、主な機能、設定方法、価格など。)

このケースは、まねきTV事件の公衆送信権侵害を思い出す。なぜ、ロケーションフリーは生産完了になったかで引用した最高裁の裁判要旨では、
誰でも契約すればサービスを利用できる以上、利用者は公衆にあたる。番組を機器に入力しているのは永野商店であり送信の主体である。サービスは著作権法上の送信を可能にする権利を侵害していて、公衆に対して送信できる権利も侵害している。(裁判要旨) (ロケーションフリー-Wikipedia)
この判決についてITライターの小寺信良氏はこう書いてる。
ネットに繋がったパソコンやサーバはもちろんのこと、ルーターまでその範囲に入る可能性がある。SeverManのようなアプリを入れればスマートフォンももちろん入る。じつはものすごく広い定義というか、ネットに繋がっている機器ほぼ全部が自動公衆送信装置であることになる。

そして判決では、「送信可能化」というのは、自動公衆送信するための準備をした段階を指すということになった。つまり実際に送信するかどうかは関係なく、送信できる準備をしただけで送信可能化権の侵害になり得るという。

そうなると困ることはいろいろ出てくる。たとえば文章や音楽、あるいは書類でもなんでもいいが、著作物制作の過程で業務として人の著作物をクラウドサービスにアップした段階で、共有設定とかしてなくても、送信可能化権云々の話が出てくることになる。(コデラノブログ4まねきTV裁判こぼれ話)

そこで公衆送信権を調べてみる。その中で、問題になってくるのが送信可能化権については、
送信可能化権(23条1項)とは、インターネットなどで著作物を自動的に公衆に送信し得る状態に置く(2条1項9号の4)権利であり、平成9年の著作権法改正の際に導入された。

自動公衆送信においては、実際に送信行為が行われるのは、利用者のアクセスがあった時である。しかし、公衆送信権の対象は、送信行為であるため、実際にアクセスがなければ公衆送信権の侵害は生じない。また、利用者がアクセスして送信行為が行われたことを確認することが困難な場合もある。

そこで、送信行為の前提となる、自動公衆送信し得る状態に置く送信可能化行為を、著作権の対象とすることで、著作権者の権利行使を容易にしている。

なお先進国で送信可能化権を明文で規定しているのは日本とオーストラリアのみである[1][2](2004年現在)。

日本においては、インターネット上での著作権侵害(または、公衆送信権侵害)といえば、この送信可能化権の侵害を指す(例:ウェブサイト上や動画共有サイトでのテレビ番組の権利者に対する無断アップロードなど)。(公衆送信権-Wikipedia)

つまり、iTunes StoreやAppStore や iBookStoreなどアップルのストアから購入した楽曲、アプリ、本を除いて著作権者に無断でiCloudに保存(アップルに送信)できないことになる。このように、日本では、著作権制度がCloudの障害になる可能性がある。

さて、このような日本でこれから平井氏の言う「ホームエンタテインメントのハブ」にする方法はDTCP-IPによって

コンテンツを暗号化してIPネットワーク上に送信し、更に、 ホームネットワーク(家庭内LAN)から外部のインターネット上に出ないような工夫をして、 コンテンツの著作権を保護」(LANHOME技術紹介・解説)
するしかないという事である。したがって、ソニーの「ナスネ」はロケフリと全く反対の方向を向くことになった。もちろん、ジョブズ氏の「デジタル・ハブ」の構想とはかなり違うが。
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