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素人だから言えることもある

クラウドを巡るアップルとグーグル(ホームサーバの戦い・第121章)

なぜ、ロケーションフリーは生産完了になったかで、ソニーのロケフリを使ったまねきTV訴訟で、日本国内の著作権制度の「送信可能化権」により、ユーザーのオリジナルなコンテンツでない限り、他人の著作権管理にあるものをインターネットに流すことは違法であるという最高裁判断があった。それを厳密に守っていくと、いろいろ支障が出てくる。ITライターの小寺信良氏は、

そうなると困ることはいろいろ出てくる。たとえば文章や音楽、あるいは書類でもなんでもいいが、著作物制作の過程で業務として人の著作物をクラウドサービスにアップした段階で、共有設定とかしてなくても、送信可能化権云々の話が出てくることになる。(まねきTVこぼれ話コデラノブログ4)
この判断を厳密に守れば、インターネットに他人の著作物を流した時点で違法になる。公開目的でなくても下書き段階でクラウドにアップする事が出来なければ、それはクラウドサービスを楽しめない。この制度にひっかかったのが、アップルのiCloudだった。ナスネは第二のロケフリになるか(ホームサーバの戦い・第119章) で見たとおり、ユーザーが個人的に集めた他人の著作物はiCloudに送信できないのである。

一方、ソニーは、DLNAという団体に所属し、所属したメーカーの機器のみでDTP-CPという暗号技術を使ってお互いの機器のコンテンツをやり取りできる。アップルがDLNAに加盟すれば、問題は解決かと思ったのだが、「Thread: iPadからRECBOX内の地デジ等の動画再生は可能ですか?」というQ&Aにこう書いてあった。

そもそも、AppleDLNAに加盟してないし、wiondowsなどと違って、OSレベルでそのベース となるUPnPをサポートするつもりがない。 ソフトベンダーは、本来OSレベルで持っていてしかるべき部分まで自前でやらねばならない。 Apple自身が自分たちが管理できる閉じた世界で利益を上げるビジネスモデルなので、そんななかに、リスクを負ってまでソフトベンダが参加するほどの利益も望めないとなれば、参入する会社もないでしょう。
それに対して、グーグルのアンドロイドは、アップル以外のほとんどのメーカーが採用している。前項「これからスマートフォンが起こすこと。」の久夛良木健特別寄稿(ホームサーバの戦い・第120章) で、本田雅一氏の「これからスマートフォンが起こすこと。」(東洋経済) を紹介したが、その中でこんな文章があった。
iPhoneの世界は、アップル一社によって構築されたものだ。アップルが審査を行うことでアプリケーションの質が保証され、ユーザーインターフェイスやアプリケーションの動作スタイルを含めて、その世界観が壊れないように美しい秩序を保っている。なにしろハード端末も、基本ソフトも、アプリケーション開発環境やツールも、それにアプリケーションの流通から決済に至るまでも、すべてアップルが理想的な形で設計しているからだ。

だが、アンドロイドにはざっくりした大きな枠組みしかない。前述したアンドロイド・マーケットによる流通やアプリケーションの開発環境などは存在するが、携帯電話事業者や端末メーカーがそれぞれ工夫をこらして開発することができる。アンドロイドを構成するソフトウェアは、スマートフォンの開発者に無償でライセンスされ、自由に改造することができるオープンソースの開発モデルを採用しているからだ。そればかりか、それぞれの端末をサポートするアンドロイドのバージョンが異なるケースもある。

このことは、アンドロイドがiPhoneと同じくらい洗練された製品になるには、まだ時間がかかることを意味してもいる。自由になる範囲が広いので、統一感を引き出すことが難しく、猥雑、混とんとした状況がしばらく続くだろう。

グーグルは、アンドロイドをなぜそのように開発したのだろう。
ご存じのように、グーグルは世界でもっとも大きなオンライン広告の会社だ。つまり、グーグルが必要としているのは、質の良い広告表示先である。

携帯電話は、その端末を持つ個人が確定していて、生活のほとんどを共にするパートナーだ。このため、ターゲット広告(特定の属性を持つ人に合う広告を選んで見せる手法)に使いやすい。グーグルがアンドロイドなどモバイル分野に投資をする理由は、広告の効果を高めるための出口として使いたいからだ。

であれば、携帯電話事業者や端末メーカーに広く開放して、アンドロイドの搭載率を上げることが、いちばん理にかなっている。

このことは国外ではあまり問題にならないだろうが、日本国内ではiPhoneにとって大きなハンディキャップとなる。アンドロイドは携帯電話事業者や端末メーカーが独自の機能を組み込めるが、iPhoneはアップルが世界的に統一したハードウェアしか許さないので、ハードゥエアに関わるような独自機能を創造することができない。ということは、日本独自の社会インフラと整合性をとることができないということだ。
つまるところ、“ガラパゴス”と相性が悪いのである。(日本で多数派になるもうひとつの理由/本田雅一著「これからスマートフォンが起こすこと。」東洋経済 )

なお「出口」としてこんな注釈があった。
出口

携帯電話は契約者の情報や行動の履歴を合法的に得やすい。広告の効果を向上させるには、広告を見ている人が邪魔に感じず、興味を引く話題に対して、適切なトーンでオファーする必要があるが、それは広告の出口が“個人に近い”ほどやりやすくなる。現代のもっともパーソナルな機器である携帯電話は、まさにうってつけのターゲット広告の出口なのだ。(本田雅一著「これからスマートフォンが起こすこと。」東洋経済

今は、アップルが勝利しているように見える。でも、久夛良木氏が
その意味でAppleの採った戦略は、現時点での一つの現実解と言える。一方、筆者(本田雅一氏)が指摘するように、それらの様々なネットワーク上の制約をものともしない勢いでAndoroidベースのスマートフォンが一気に市場を獲得する可能性も否定できない。(本田雅一著「これからスマートフォンが起こすこと。」東洋経済 )
と言うように、競争を続けながら、一方で次第に融和していくだろう。その時には、アップルだのグーグルだのハードウェアを意識しないですむことになろう。
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