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素人だから言えることもある

簡単に、ワーク・シェアリングと言うけれど

ワーク・シェアリングとフレキシキュリティ

 最近、ワーク・シェアリングという言葉が飛び交っている。
「雇用対策、ワークシェアリングも選択肢」経団連会長

 日本経団連御手洗冨士夫会長は6日の経済3団体トップによる共同会見で雇用対策を問われ、「ワークシェアリングも一つの選択肢で、そういう選択をする企業があってもおかしくない」と述べた。会見に先立つ3団体共催のパーティーでのあいさつでも、「時間外労働や所定労働時間を短くすることを検討することもあり得る」と語った。 (朝日新聞1/6)

連合会長「ワークシェア議論を」 労使で雇用維持目指す

 連合の高木剛会長は5日、都内で開いた年頭記者会見で、雇用維持の観点から労使双方で「ワークシェアリング」導入に向けた議論の場を設けたいとの意向を明らかにした。日本経団連側も先月の会見で同制度について言及しており、今後、労使間で制度導入に向けた議論が活発化する可能性が出てきた。
 連合は2009年春闘の闘争方針で8年ぶりにベースアップ要求を復活させており、高木会長は「賃金も雇用もというスタンスでやらなければ景気回復はできない」と述べ、賃上げと雇用確保の両立を目指す考えを強調。
 ただ、ワークシェアリングについて「日本経団連との協議の場を持つため(連合内部で)議論を続けている。(議論が)詰まるのか詰まらないのか分からず、入り口の議論だ」と語った上で、導入には「同一価値労働同一賃金の原則などの課題がある」と説明した。(中日新聞1/6)

 「ワークシェアリングとフレキシキュリティ(3)」というブログによると、オランダの奇跡などのオランダ・モデルやデンマーク・モデルなどは、フレキシキュリティというらしい。引用もとの週刊東洋経済オンラインでは、
デンマークとオランダが先鞭、EUが目指す柔軟な労働市場と雇用保障(1)

 EUがモデルにする新施策のキーワードはフレキシキュリティ」。「柔軟性」を意味するFlexibilityと「安定、保障」を意味するSecurityを掛け合わせた造語で、相反するかに見える「労働市場の柔軟性」と「雇用の保障」を両立させる考え方である。


 EUは2005年、雇用戦略の中でフレキシキュリティを取り入れる戦略を打ち出し、翌06年にはEUの雇用状況を分析する報告書『Employment in Europe2006』でフレキシキュリティを大々的に特集。加盟国に対して、フレキシキュリティ導入を強く奨励している。(デンマークとオランダが先鞭、EUが目指す柔軟な労働市場と雇用保障(1) )

デンマーク・モデル

 EUがお手本にするデンマークの政策は、「黄金の三角形(ゴールデン・トライアングル)」と呼ばれ、(1) 解雇しやすい柔軟な労働市場、(2) 手厚い失業給付、(3) 充実した職業訓練プログラムを軸とする積極的労働市場政策、の三つが有機的に連携している点が最大のポイントだ。


 重要なのは、労働力の移動を容易にし産業構造転換を図りやすくするための解雇規制の緩和と同時に、手厚い失業対策を講じて労働者の不安を取り除くこと。デンマークの失業給付期間は、最長で4年。失業給付のレベルも、前職の手取り所得の63〜78%に及ぶ。低所得者層に対しては、89〜96%という手厚さだ。

 しかし、失業者が働かないまま福祉に頼り続ければ、社会支出がかさみ、労働市場からは働き手が消える。そこで、デンマークは、失業手当を受け取るための条件として、職業訓練プログラムへの参加を義務づけ、失業者のスキルを高めて再就職を促す仕組みを整えた。言ってみれば、雇用保障は一つの仕事や会社で行うのではなく、労働市場全体で行うとの考え方だ。こうした政策の結果、デンマークの長期失業率は減少へと向かっている。(デンマークとオランダが先鞭、EUが目指す柔軟な労働市場と雇用保障(1) )

 しかし、このデンマーク・モデルにはこんな批判がある。
 特に、こうした政策を実現可能としているのは、使用者団体と労働団体の合意を中核とした政労使三者合意による世界最高水準の国民負担率(74%)に対する国民の合意である。

こうした条件の下、GDPに占める労働市場政策への支出割合も 4.5%、失業者の再訓練を含む積極的雇用対策費は同18 %とOECD諸国で最高となっている(我が国ではそれぞれ 0.7%、0.3%)。ラーセン教授によれば、「世界で最も費用がかかるシステムであるが、国民はこれを投資と見なし納得している。」とのことである。

失業しても深刻な事態にはならない手厚い失業給付とセットになった職業訓練による活性化施策が大きな役割を果たしているからであろう。特に、失業者に対する職業訓練は、スキルの低い労働者が高い資格を得られるようにするなど非常に充実したものとなっている。これは継続的に更新される基本スキルを有した労働力を基盤とした企業競争力の源泉ともなっている。

 以上でみてきたような特徴を持つデンマークの労働市場及び労働政策であるが、ラーセン教授は、「デンマークモデル(フレキシュキリティ)は、100年近くの長い年月をかけて(政労使3者合意により)構築された福祉国家を基盤にしたものであり、直ちに他国に輸出できるものではない。」との考え方を示されていた。

また、デンマーク企業の労働市場は、我が国のような内部昇進型ではなく、転職によりスキルアップや職位レベルのステップアップを図っていく(逆に同一企業内ではスキルアップ・ステップアップは一般的ではない)という米国に類似した労働市場である。

このようにデンマークの労働市場は、我が国とは異なった社会構造・制度・慣行を背景に形成されたものであることを無視することはできないであろう。(独立行政法人 労働政策研究・研修機構 デンマークのフレキシキュリティと我が国の雇用保護緩和の議論)

オランダ・モデル

また、オランダ・モデルも、デンマーク・モデルとは少々違うらしい。
 一方、オランダでは90年代半ばから労使折衝などの場でフレキシキュリティの言葉がたびたび登場、デンマークを後追いする形で1999年に「柔軟と安定性に関する法」=フレキシキュリティ法を施行し、一定期間(1年半〜3年間)就業した派遣労働者には、正規労働者として雇用契約を結ぶ権利を保障した。

 続く00年には、働く側が労働時間を選べる「労働時間調整法」が施行され、労働者が雇用主に労働時間数の増減を要請できるようになった。

 こうした改革の背景には、他国に比べ派遣労働者の割合が高いという、オランダ特有の背景事情がある。オランダでは「パートタイム」が標準の働き方で、男性は週4日、女性は週3日働くケースが多い。全就労者の3分の1以上を占めるパートタイマーは、パート=非正規雇用を意味する日本とは違い、文字通りのパートタイマー、つまり「短時間で働く正社員」だ。

(中略)

 フレキシキュリティの導入によって、不安定雇用が減少し、経済は成長、出生率も回復したデンマークとオランダ。文化や歴史、経済規模が異なる日本に対して、どこまで有効か未知数な面も多いが、少なくとも、欧州の経験によって日本が抱える問題点はまざまざと浮き彫りになる。

 日本の場合、第一に非正規の待遇を向上させること。第二に正社員の解雇規制を緩和すると同時に長時間労働などの拘束を弱めること。第三に失業給付などセーフティネットを手厚くして職業能力開発とセットにすることだ。その際正社員の解雇規制緩和だけを先行させないなど政策の順番も慎重に考えるべきである。(デンマークとオランダが先鞭、EUが目指す柔軟な労働市場と雇用保障(1) )

 このオランダ・モデルについても、NHKのスペシャルによると、こんな違いがあるらしい。

職業訓練の場は、国の予算で運営されているが、学費及び交通費は、企業側の負担

毎年、派遣社員の3割が正社員として採用されている

企業ばかりでなく、国民も大きな負担をしている

消費税は、生鮮食料品等を除いて19%(生鮮食料品等は6%)

所得税及び社会保険料の世帯当たりの負担は、日本の約2倍

国民は、賃金の抑制に度々応じてきた

昨年10月にも、不況の影響を受け、労働組合は今年の賃金抑制を受け入れた

バルケネンデ首相は「最も重要なのは、労働者が仕事を失わず、企業が国際競争力を保てるよう、負担を分かち合うことに合意したことだ」と話す

多くの国民が今回の「労使間の賃金抑制の合意」を支持している。

国民の総意に基づいた「負担の分かち合い」が、社会全体を支えている。(「ワークシェアリングとフレキシキュリティ(3)」)

 経営側も、連合もこれほどの覚悟をしての発言なら大変すばらしい。だが、相変わらず、そこまで踏みこんだ話はしていないだろう。経団連の会長の頭には、(1) 解雇しやすい柔軟な労働市場があり、連合の会長の頭には(2) 手厚い失業給付、(3) 充実した職業訓練プログラムを軸とする積極的労働市場政策(きっと政府が負担?)だけがあるとしたら、派遣社員の未来は大変暗いものがある。そこまで三者(政労使)が負担を分かち合う覚悟が必要な政策なのである。
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