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「NHK×日テレ60番勝負」T部長ムチャぶりの理由

今回の「NHK×日テレ60番勝負」(2月2日・3日)の特番は久々に面白かった。特に、一連のNHK60周年記念番組の「1000人が考えるテレビ ミライ」(2月1日)が、テレビに対する視聴者のダメ出しの連続なのに対して、この「NHK×日テレ60番勝負」は、テレビ側が視聴者に対しての答えという意味があったのではないか。

その中で、24時間でドラマを作る試みは、今まで芸人に対するムチャぶりで有名になった『電波少年』のT部長こと土屋敏男氏(日本テレビ編成局専門局長)が、両局のドラマ制作スタッフにムチャぶりをすることで視聴者の興味を引いた。さらに2つの番組の間の22時間のストリーミング中継は、両局のテレビ制作の違いを際立たせ、今、テレビはどうやって作られているかを知らせる生のドキュメントになっている。

土屋敏男氏は、「1000人が考えるテレビ ミライ」の中でこんなことを言っていた。その部分を書き起こしてみる。

土屋 今のVTR(日本テレビ「世界の果てまでイッテQ!」)は、非常に正直、気恥ずかしいというか、作り手が熱を持ってるなんてのは、当たり前の話で、これは多分、今のすべてのテレビの作り手は、持っているはずだと思うんですよね。そんなことを言わなきゃいけないなんて事は、多分ないわけで。それで、でも、なぜテレビが面白くないって言われているかっていうことに関して、ちょっと考えたのは、この番組で、例えば、「今、面白いテレビバラエティーは何ですか?」というアンケートをしたそうです。そしたら「アメトーーク」というふうに言われて、お正月にやっぱり「TV放談」というNHKの番組があって、

 

(字幕「アメトーーク」テレビ朝日
共通の特徴を持つタレントを集めたトーク番組「ひな壇芸人」というジャンルを定着させた)

 

そこでもランキングをやってましたね。(注「クジラ対シャチ」の謎(「新春TV放談2013」後半部分補足情報・1)の2012年人気バラエティーランキングを参照)

そこでも「アメトーーク」というのが一番。その時に、やっぱり4年連続「アメトーーク」といわれているとお正月に聞いた時に、「あっ、これはもう、テレビバラエティーの作り手が怠けてる証拠だな」と思いました。だからテレビは面白くないといわれていると。「アメトーーク」は、もうあるからいい。そうでないものを見せろ。そうでないものを作れないんだったら、テレビバラエティーは面白くない、要らないということだと思います。要するにその時、その時にあるテレビバラエティーというものを、乗り越えよう、否定しよう、そうじゃないものを作ろう。ということがあったから、テレビバラエティーというのは面白いと言われてきたと僕は思うんです。来年のランキングが変わっていくのではなかったとしたら、まあテレビバラエティーはここで終わりでいいなと思いますし、そんなことは多分ないと思いますけども、それを目指す作り手たちが、各局の現場の中にいるかどうかだと思います。以上です。

この提言に対して、いくつかの討論があったが、注目すべきは、ドラマ作家北川悦吏子氏の言葉。

土屋 はい、北川さん。
北川 このご時世で、予算が少なくなって、ひな壇芸人を並べたのが一番予算が少なくできるとか、そういう事ってあるんですか?
土屋 それはどうですかね? それぞれ皆さん、ギャラは高いと思うので、そんなことはないと思いますよ。やっぱり、制約がいろいろあるって言われますけど、制約こそがチャンスだと僕は思うんですよね。こうこうこうで、みんながその制約の中でやってるわけだから、そこを抜け、だから、例えば、自分の話が一番わかりやすいんで、言いますと、「電波少年」って番組は、みんながなんとなく、バラエティーってのは、永田町(首相官邸)に行くもんじゃないって、思っていたから、そこを永田町に行ったから、「電波少年」っていうのは新鮮だったし、そこで何らかの成功の決着点がないと思ってたけど、それはもう要するに予定調和するよりは、ダメならダメ、玄関で追っ払われたら、それはそれで面白いんじゃないのっていうことが、さっきの「イッテQ!」の古立もそうですよね。当然、これ成功しなきゃならないんじゃなくて、その過程の中で、人間が真剣だったら、面白いだろうということを見つけたというか。その形が、今の番組(「イッテQ!」)に受け継がれてる。
糸井重里 土屋さんさ、「電波少年」の最初のすごい貧乏くさいスタジオあったじゃないですか。あの時の、1回の予算っていくらぐらい?
土屋 1回の予算…、でも、とにかく3か月のつなぎ番組なので、とにかく予算をオーバーするなっていうふうにはすごく厳しく言われましたね。
糸井 おおむね、いくらぐらい?
土屋 150万(円)ぐらいじゃないですか? 1本150万ぐらい。
糸井 ほら、やっぱり、びっくりするんだよ、みんな。
北川 150で…ドラマとか、ありえない…。
土屋 でも、それが、つなぎ番組の予算ですし、ですから一番近いのは、当時、日本テレビ麹町にあるので、すぐ行けるのが永田町なんですよね。(当時の日本テレビと首相官邸の距離約1500メートル)
北川 それはでも大事です。
土屋 ええ、歩いて行けるんです。首相官邸まで。議員会館まで。というのはすごくありましたね。だから、千代田区出るとちょっとドキドキしました。
主婦小澤(一般視聴者) 今、見てて、「イッテQ!」って何回かしか見たことないんですけど、ちょっと見てる間でも、笑いがあって、感動があってっていうのが、やっぱり作る方の熱だと思うんですね。わたしか本当に以前、よくテレビを見ていた頃って、家族とか親子全体で見られるバラエティー番組がすごく多かったように思うんですよ。だから、おじいちゃんからおばあちゃんから、子供までが一緒に見てて楽しめて何て言うんでしょう? お腹抱えて笑って団らんの中にテレビがあったっていう。だから今でも、昔のテレビっていうのは良かったなって。それで慢性化してるっていうか、テレビに慣れちゃったんですかね。で、今は、面白さを感じないのかな。
糸井 いつの間にか、ターゲットって言葉をやたらに使うようになって、何歳ぐらいの男に見せたいとか、ああいうことを、ものすごく言うようになりましたよね。
土屋 ただ、僕も「電波少年」って大体、上の方の世代の方は、あんな失礼な番組は、もう見たくもないって随分おっしゃった。ただ、それはやっぱり、自分が面白い…要するに、それは大事なのは、今、やってない事。今、テレビでやってない事を探すエネルギーを向けるかどうか。その歴史が確実に、テレビバラエティーって、やっぱり、そうやって作ってきたんですよ。ましてや、例えば、ソーシャルネットワークっていうものが出来て、さっきの熱っていうものが伝わりやすくなったんです。昔は、例えば、次の日、学校行って「昨日の『電波少年』見た」って言ってくれないと、伝わらないんですよね。ところがソーシャルネットワークで今、見たよ、面白かったよって言う形の、ソーシャルネットワークで広がるようになってるのですから、作り手の熱は広がりやすいんです。ですから、インターネットは、明らかにテレビの作り手の味方になってるんですよね。…って言うことをやっぱり認識すべきだと思います。
糸井 今日の土屋さん、かっこいい。
土屋 ありがとうございます。

土屋氏の発言がそのまま「NHK×日テレ60番勝負」の番組に結びついていることが分かる。
(1)誰かがやって成功したことではなくて、誰もやってない事
(2)制約を作って出演者の真剣さを見せる事
(3)ソーシャルネットワークを活用する事

つまり、「NHK×日テレ60番勝負」、特に24時間でドラマ制作の過程を見せることがこれからのバラエティーの生きる道だということである。

 

 

追記

土屋敏男氏は、「1000人が考えるテレビ ミライ」と「NHK×日テレ60番勝負」が関連していることをツィートしている。

 

NHKの「1000人が考えるテレビ ミライ」再放送中らしいけど「バラエティは新しいものを提示する事が使命」と言い、その後の「NHK✖日テレ60番勝負」でその一つを提示したつもりだから出来ればとセットで再放送して欲しかったが、ま、そうもいかんだろう。。。

(https://twitter.com/TSUTIYA_ON_LINE/status/297969017820442625)

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