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素人だから言えることもある

日本人がどんどんダメになる

立花隆氏の嘆き

産経ニュースに「話の肖像画」というコラムがあり、評論家の立花隆氏の「日本が危ない」というインタビューがあった。
【話の肖像画】日本が危ない!

このままでは日本はダメになる」。時の権力や巨大組織に徹底した取材で立ち向かい、日本のジャーナリズムに影響を与えた立花隆氏が、わが国の将来に警鐘を鳴らす。

(中略)

立花 まず人材不足です。これから急速に進む人口減。いま日本の研究者や技術者は約270万人いますが、2050年は政府予測でも100万人減り、170万人になります。量的減少だけでなく、質もどんどん低下し、現在の技術社会の維持すら怪しくなるでしょう。少子高齢化社会による人口減問題は、科学技術の世界に一番響いてくるのです。(中略) 人材教育には20年から30年の時間が必要ですが、その間の小、中、高、大学の一貫した教育が大事です。それがいま、ガタガタになっている。(中略)やる気がないということです。チャレンジ精神が希薄になっている問題があります。例えば、大学や研究機関に所属する研究者でも、欧米への留学のチャンスがあっても嫌う連中が増えている。貧しい時代と違い、いまの日本にはインフラも資金もある。しかもポストもある。日本にいたほうが楽なんです。若者にチャレンジ精神がなくなり、楽な道を選ぼうとする国に未来はありません。(【話の肖像画】日本が危ない!(上))

しかも、この人材の枯渇は、あらゆる分野で起こっているという。

立花 いま日本は、政治も外交も経済も社会もすべての基本的システムが変わらざるを得ない大変革の時代に入っている

 しかし仮に次の総選挙で自民党から民主党に政権が移っても、民主党にも人材はいませんから、すぐまた国民は失望し、政治はますます混迷の度を深めるでしょう。

 一大政界再編が起こるところまで行かないと、次の政治的安定の構図は見いだせないと思います。

 日本はマスコミを含めあらゆる分野で人材が枯渇し、システムそのものまで機能せず、おかしくなりつつある

——マスコミもですか

立花 既存のメディアすべてが未曾有の危機的状況で、ジリ貧状態に追い込まれている。しかもメディアの生命線の取材力、発信力がガタ落ちしています。(【話の肖像画】日本が危ない!(中))

——ドン底まで行かなければ日本再生は難しい、と

立花 そうですね。45年の敗戦時のように、この国のシステムを根本的に解体して、組み直すぐらいのことをしないとダメだと思います。

 そしていま必要なのは“第3の開国”です。文化的、社会的に“開国”して、人材を広く海外から迎え入れることです。各界で起きている危機的人材不足を補うためにも急ぐ必要がありますが、これは日本人と日本文化の海外雄飛にもつながるという視点が必要です。


 もしこの必要性が理解できないとしたら、日本の危機をまだまだ自覚していないと思う。そのためには日本はもっとダメになったほうがいいのかもしれない。(【話の肖像画】日本が危ない!(下))

 これは、世界中に吹き荒れている金融危機のことではない。日本人の質が落ちるところまで落ち、そのことに日本人自身がそれに気づいていないということである。そして、今回の金融危機は日本人にそれを教えてくれるいいチャンスかもしれない。

「自己責任」と人質と派遣社員

 僕は、「メディアの望んだ世界」で「無痛文明論」(森岡正博著/トランスビュー社)を紹介した。
「家畜は環境を快適にコントロールされ、毎日食料を与えられ、ひたすら食べて眠ることをつづけながら生きています。その姿は、空調の効いた快適なオフィスで日々決まりきった仕事をする現代人の姿によく似ています。苦痛を避け、快適に暮らすことを目標に進んできた現代文明は、じつは人間を家畜化するだけなのではないか? 我々は安全と快適を得る代償に、生命の輝きを奪われてしまったのではないか?」(紹介記事より)
 快楽を求めて生きている人間ほど、不思議なことに、苦痛や貧困に悩む人間を無視したり、避けようとする。かつて、イラク戦争にボランティアで援助に行った人たちが、人質になったために「自己責任」論争まで巻き起こしたことがある。
 イラク現地の武装勢力が、イラクに入国した外国籍のボランティア、NGO職員、民間企業社員、占領軍関係者などを誘拐する事件が頻発した。誘拐の要求の多くは、誘拐した外国人を人質に、彼らが本籍を置く政府に対して、イラクに派遣した軍隊(日本の自衛隊を含む)の引き上げを要求するものであった。

 日本政府は、当時イラクへの渡航自粛勧告とイラクからの退避勧告を行なっており、被害者がそれを無視して渡航したことや、この拉致事件の解決を目的とし、被害者家族らが自衛隊の撤退を要求し、それがメディアで大きく報道されたことから、被害者とその家族に対する「自己責任」という言葉をキーワードとした批判、さらにそれに対する反批判などで国内政治家・マスコミ・世論が様々な見解をぶつけるなど、日本国内の注目を集めた。(イラク日本人人質事件)

 この「自己責任」論争の奇妙なところは、日本に住む人間が平和な世界なゆえに、わざわざ戦争のような危険な場所に行ってまで、苦痛や貧困に悩む人を助ける行為を理解できないためであった。そして、「自己責任でイラクまで行ったのだから、日本政府が身代金を払ってまで助けることはない」という意見すら飛び出した。

 それが、現在では、「派遣社員」と「正社員」の関係に成り代わり、「彼ら派遣社員は、その職種を自分で選んだのだから」という論理で、ホームレスになるのも「自己責任」との議論に変わった。この2つの面を共通項でくくれば、苦痛や貧困で悩む人たちに対して、一段と高い位置から見下ろしている視点が浮かび上がる

 不況が長引くにつれ、かつてのイラクと日本の関係のような絶対的な関係ではなく、いつ正社員が派遣社員に変わるかわからない、自分の未来さえ不透明になってくると、自己責任ではすまない現状が明らかになってくる。

 NPO法人自立サポートセンターもやい事務局長の湯浅誠氏は、

中間層の正社員たちにぜひとも理解してもらいたいのは、これは、あなたたち自身の問題であるということだ。貧困を放置すれば、遠からず中間層も滑り台を滑り落ちることになる。

家もカネもない貧困層は、食うために、正社員の半分の給料の仕事でも我慢せざるをえない。すると、同じ職場で同じような労働をしている正社員は、なぜ倍の給料をもらっているのかとなる。

正社員は、自らの存在理由を守るために長時間のサービス残業を余儀なくされ、心の病にかかる人が増える。互いにかばいあうだけの余裕も失われ、職場の雰囲気がギスギスしていく。現に、労基署へのいじめ相談件数は増え続けている。

かくして会社を辞める人が続出するが、残されている正社員の椅子は数少ないため、彼らは非正規化していく。結果、劣悪な労働環境に甘んじざるをえない非正規社員がさらに増えていくのだ。(週刊ダイヤモンド3/21号「あなたの知らない貧困」)

 かつては、非正規社員から正社員になる道もあった。今では、正社員から非正規社員への一方通行への道しかない。そして、正社員の数はどんどん減るばかりである。

ケータイの中のとても小さなコミュニティー

 CNET Japanの記事に「メディアが取り上げないモバイルの世界」というコラムがある。そこでは、ホムペ作成サービスの「@peps!」や、プロフやブログなどの「Chip!!」を運営しているピーネストの代表取締役社長、村田泰氏のインタビューがあった。利用者のおよそ8割は女子中高生たちだという。
「ホムペ」「プロフ」「リアル」--ケータイ世代が生み出す新コミュニケーション

 村田氏によると、彼女たちのコミュニケーションの大きな特徴は、リアル社会での友達がバーチャルの友達にもなり、ネットでの付き合いとして発展していくところにあるという。リアルな友達と昼間だけでなく夜も繋がっている感覚を得るために、こうしたサービスを積極的に利用するのだそうだ。

 一方、ネット上で友達を作ることに対しては「怖い」という印象を持っており、消極的なのだという。テレビや新聞などでネットの負の部分が取り上げられている影響が強いようで、「携帯電話は画面が小さく一度に表示される情報量が少ない分、メディアで見聞きした情報から(『携帯電話の番号が分かってしまうのではないか』などと想像を膨らませてしまい)、なおさら怖い印象を持つのではないか」と村田氏は話している。

 このため、自分のホムペなどを不特定多数に見られるのは好まない人が多く、「友達や仲良しグループだけに見て欲しい」という傾向が強いという。プロフィールや、プリクラなどの写真を公開するといったように、個人のデータボックスのような形で活用されるケースが多いようだ。サイトを閉鎖する理由にもそうした心理が色濃く表れており、「友達がアクセスしてくれず、誰も見てくれなくなった」というものや、「友達以外には見られたくなく、宣伝も何もしていないのにアクセスが急に増えたのが嫌」というものが多く見られるという。

 ここから見えてくるのは、ネットを通して見知らぬ人と友達になることではなく、日頃から付き合っている友達とより親密になりたいと思っているということだ。これは、現代の日本人の特徴の一つだろう。大変小さな世界の中で、満足しており、その壁を壊そうとか乗り越えようとかしない。立花氏の言うチャレンジ精神のない人ばかりだということである。

 僕は、ずーっと「考えない人間」をテーマにしてきたが、彼らは別に馬鹿ではないし、それなりに優秀なのである。ところが、その優秀さをその限られた狭い分野の中でのみ使っている。それは、右肩上がりで平穏な世の中なら、先輩の言うとおり、まねをしていれば責任など取らなくてもいいし、それなりに出世できた。ところが、今のような何が起こるかわからない世の中では、壁を壊す力がないと、たちまち逃げられなくなる。壁を壊すというのは、どうやったら今の世の中を変えていけるのかを考えるということだ。これを「考える人間」というのである。この「考える人間」が出なければ日本人はどんどんダメになるだけである。
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