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素人だから言えることもある

私たちには妄想が欠けている

知識組替えの衝撃

 αブロガーの村上敬亮氏の「情報の質とコンテンツ〜経験価値経済の時代へ〜」の中で、経産省の「知識組替えの衝撃〜現代の産業構造の変化の本質〜」について言及されていた。
そこで、プリントアウトして読んでみた。
報告書の要約としてこう書かれている。
1、「宝の持ち腐れ」が生む成長力の低下と二極化

○ わが国には環境技術、中小企業を含めたものづくりの現場力、クールなデザイン、豊かな地域資源等、競争力の基礎になる要素がある。

○ しかし、それらが十分に活かされていないために、成長力の低下や二極化を招いている。いわば「宝の持ち腐れ」の状況。

○ つまり、日本に足りないのは個別の技術やノウハウ、デザインそのものではなく、これらを組み合わせて活かす力。

2、現代の競争力の源泉=知識組替え

○  現代の競争力の源泉はグローバルなトレンドとソリューションの創造。

○  国内市場の拡大に制約があるわが国は、アジアを中心とするグローバル市場のなかで富を獲得することが不可欠。(グローバルに稼ぐ)

○  グローバルに稼ぐには、個々の技術の良さだけでは不十分、大企業と中小企業、業種、ものづくりとサービスといった従来の枠を超えて技術、ノウハウを組替える大胆なイノベーション(=知識組替え)がひつよう。

○  知識組替えは既存の技術、製品を超えたトレンド、ソリューションを生み、そこに世界の知識と投資が集まる。結果収益が高まる。(トレンドとソリューションで稼ぐ)

○  現状では、わが国は組織、業種の縦割りや国内市場へのこだわり等から、知識を組替えてグローバルなトレンドとソリューションを生む力が不足。それが上記の「宝の持ち腐れ」につながっている。

○  同様のことが地域レベルでも発生。地域内の資源が組織の縦割りを超えて組み替えられないことで地域力の低下を招来。たとえば地域医療の崩壊。地域の観光・農業振興にも同様の地域総がかりの発想が必要。(「知識組替えの衝撃〜現代の産業構造の変化の本質〜報告書」)

以下、141ページにわたって、論文は続くのだが、簡単にまとめれば、縦割りやピラミッド構造の中で、中小企業はグローバル化することが阻まれている。そこで世界に展開するためのネットワークを通した「つながり力」が必要としている。そして中心となるコーディネーターの要件は
○  あらゆるところから情報を入手する。

○  他者が求めることを特定し、それに関する指導、監督や彼ら自身の知識や能力の向上を助ける。

○  積極的なコミュニケーションをとる。

○  ニーズを分析し、製品の仕様を決める。

○  物事を柔軟にとらえる。

○  他人の発言に耳を傾け、情報やアイディアを理解する。(「知識組替えの衝撃〜現代の産業構造の変化の本質〜報告書」P68)

イノベーションとブランディング

 一方、海外に売り込む中小企業の側にも向いている人材というものが必要なのではないか。どれほど、有能なコーディネーターがいても、積極的に海外展開を考える人材がいなければ、「知識組替え化」は成功しないのだ。この内と外が呼応して初めて、日本のビジネスは発展できる。僕は、「企業ブランディングと地域ブランディング」で学習院大学の青木幸弘教授の言葉を引用している。
 ビジョン、利害の調整、そして選択と集中だ。ただこれは自治体がもっとも苦手とすることだ。ブランドが成功するには『三つの者』の存在が鍵を握ると言われる。一心不乱に目的に邁進するバカ者、冷静に自己分析するヨソ者、後継者となるワカ者だ。とりわけ継承することが重要なので、人材育成に力を入れる必要がある。 (2006年1月4日(水)付け 日経MJから)
なるほど、経産省の文書のコーディネーターがあくまでも調整役なのは、こういう限界があったのか。さて、三者の説明として
 つまり「バカ者」の役割は「こんな街にしたい」というビジョンを高く掲げてまい進することであり、「ヨソ者」の役割は「そのビジョンのうちできる可能性のあるものは何か(選択と集中)、そのための資金調達はどうするか、地域が負担するのか、入場料を取るのか(利害の調整)」であり、「ワカ者」の役割はその町おこしのイベントを次の世代に継承することだ。そしてこの三者の間には「共感」が必要である。(「企業ブランディングと地域ブランディング」)
この三者の関係は企業ブランディングでも共通である。ぼくは、企業の成り立ちには、必ず(1) 夢を語る人(2) その夢を実現する人(3) その夢に心酔する人々が必要であると書いた。そして、「アップル・ソニー・ディズニーの共通点」では、ジョブズのこんな伝説を紹介した。
 「私がグループに入り、発売後100日で7万台、初年度50万台というすさまじいMacの販売目標数字を聞いたときは、そんなばかなと思いました。」ところが、スティーブ・ジョブズの魔法薬を飲んでいると、「2,3ヵ 月のうちに、自分でも同じことを言うし、信じるようになっていました。スティーブは、みんなにすごい影響を与えていました。彼の言うとおりにするのは無理 だって頭ではわかるんです。でも、どうしても実現したいという気持ちにさせられ、そのうち、信じるようになってしまうんです」(「スティーブ・ジョブズ偶像復活」 (ジェフリー・S・ヤング+ウィリアム・L・サイモン著/井口耕二訳/東洋経済新聞社)
そして、(2) その夢を実現する人(3) その夢に心酔する人々が後に続くのである。まず、最初にバカ者(夢を語る人)が登場し、次にヨソ者(その夢を実現する人)、その次にワカ者(その夢に心酔する人々)が現れる。こうして誰もが「そんな馬鹿な」と思っていたイノベーションが起こっていく。

バカ者の妄想は現実になる

ぼくは、このエントリーをこういう形で書くはずではなかった。ところが、CNET Japanの読者ブロガーの尊仁さんのエントリー「【TechCrunch50】頓智・は素晴らしい出会いと多くの声援に深く感謝します。」で彼のセカイカメラの構想を聞いたとき、意外にこの「セカイカメラ」は現実になるのではないか、いや、現実にしてほしいと思ったからだ。

多くの反応が冷ややかなのはわかっている。だが、こういう形で夢を語った以上、「知識組替えは既存の技術、製品を超えたトレンド、ソリューションを生み、そこに世界の知識と投資が集まる。結果収益が高まる。」人々の知識がそこに集まるのは目に見えているからだ。まだ、コーディネーターが確立していない以上、この方法しか、中小企業が世界に展開する方法はないからだ。日本こそがサプライズの源泉である。その最初の矢が放たれたのである。「そんな馬鹿な」「こんなことはできっこないよ」そんなコトバはもう聞き飽きたのである
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