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素人だから言えることもある

NHK「ヒューマン」覚え書き

NHKスペシャル「ヒューマン なぜ人間になれたのか 第1集 旅はアフリカからはじまった」を見た。解説には、

人間とは何か。人間を人間たらしていているものは何か。私たちの誰もが内に秘めている“人間らしさ”の起源を20万年という人類史のなかに探るシリーズ(全4回)。
第1回は全人類のふるさとアフリカが舞台。アフリカでは今、人類史を塗り替える発見が相次いでいる。その最たるものが南アフリカで見つかった人類最古の装身具。貝殻で作られた首飾りで「仲間」であること示す身分証のようなものだったと考えられている。祖先たちが暮らしていたアフリカの草原は常に危機と隣り合わせだった。肉食獣の脅威、食糧不足・・・。そうした過酷な環境で生き抜くには互いに協力しあい、「絆」を確認しあうことが不可欠だったのだ。しかし自然は容赦なく祖先たちを追い詰めた。7万4千年前に起きた火山の大噴火。食料が激減し、人類は絶滅の淵に追いやられる。ところが最新の考古学調査では意外な実態が分かってきた。小さな血縁集団で生きていたはずの祖先たちが、大噴火を境に遠く離れた集団と資源を交換し合うようになったのだ。未曽有の危機を前に赤の他人とも協力し合う。現代にも通じる人間らしさがこの時から発揮されたのだ。
震災からまもなく1年。「ともに生きる」という人間集団の基本が確立した過程をたどっていく。(NHKスペシャル ヒューマン なぜ人間になれたのか 第1集 旅はアフリカからはじまった)
その中から、人間とチンパンジーを比較して、チンパンジーがメス一匹で出産ができるのに対して、人間は誰かの手助けが必要だというエピソードがあった。僕は、「考える楽しみ・人間の進化とこれからの人類」でそのことに関して引用したことを思い出した。
この世に生まれてくるとき、人間ほど危険と隣りあわせで、人間ほど苦労をする動物はいない。祖先が直立二足歩行を始めたために骨盤の形が変わり、頭も大きくなった。そのため、人間の赤ん坊は回転しながら産道を通っていかなければならない。はじめは母親の腹側を向いた状態にあるが、生まれる直前に回転して横向きになる。その後、さらに 90 度回転し、母親の背中側を向いて生まれてくる。逆向きに回ってしまうと、産道の急カーブで赤ん坊の脊椎が後ろ側にねじれ、重い損傷を受けるおそれがある。

ゴリラやチンパンジーの出産はこれほど大変ではない。類人猿はしゃがむか四つんばいになって子供を産む。産道は人間に比べるとかなり広い。頭も小さいので、胎児は母親の腹側を向いた状態でいられるうえ、自力で産道から体を引き出そうとまでする。胎児が産道をゆっくりと落ちてくるとき、母親が手を伸ばしてうまく導いて外に出してやることも多い。 (チップ・ウォルター著/梶山あゆみ訳「 この 6 つのおかげでヒトは進化した 」早川書房)

人間は生まれながらに未熟で、誰かに頼らなければ生きていけないのだ。今回のNHKスペシャルでは、震災を契機に人間の絆を見直すという趣旨で、脳科学や考古学などのジャンルを超えて描こうというのだろう。しかし、専門家ほどややこしい人種もいない。未熟な人間も、専門家になった瞬間、未熟であったころの自分を忘れてしまう。僕は、「この 6 つのおかげでヒトは進化した」の中の次の文章を専門家たちに捧げたい。
新しいものを作るという人間の長年の習慣が、自分自身を窮地に追い込んでいる。私たちの道具は進化の一歩先を行って、世界をいっそう複雑なものに変えてきた。世界が複雑になればなるほど、すべてを支配下に置くためになおさら複雑な道具の発明が求められる。新しい道具があれば適応のスピードも上がるが、一歩前進するたびに別の何かを作らなくてはならない。そうやって作られるものはどんどん強力になっていくため、ひとつ作られるたびに世界は大きく変化し、その変化に適応するためにさらなる道具が必要になる。 (チップ・ウォルター著/梶山あゆみ訳「 この 6 つのおかげでヒトは進化した 」早川書房)
こうやって専門家たちによって、原発や兵器が作られてきたのだ。


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