バーチャルがリアルを破壊する
渋谷の火災
救出男性「火薬調合で爆発」=2人死亡、5人重軽傷−東京・神宮前の火災、警視庁横山さんはテレビや映画の特殊効果音などを手掛ける「ブロンコ」を経営。火薬類を扱っており、救出された際、「火薬調合中に爆発した」と説明。同署が詳しい経緯を調べている。このニュースを聞いたとき、本来、映画やテレビドラマのバーチャル世界が、いよいよ渋谷というリアル世界に侵食を始めたというイメージを抱いた。アメリカのテレビや映画がリアルに派手になっていくので、対抗上日本のテレビドラマや映画がアクションをリアルにするために、火薬を使った派手な演出をしなければならない。私達は、日常世界(リアル世界)では、このようなバーチャル世界と全く違う世界だと考える。ところが、突如として、このような火災や事故が起きたとき、意外にバーチャルがリアルとつながっていることを思わざるを得ない。
バーチャルは既にリアルを侵食している
たとえば、サブプライムローンによる金融危機がそうだ。誰もが儲かると思ったバーチャルがアメリカの金融産業を踊らせたのだ。また、特別会計という埋蔵金騒動がそうだ。おかげで、定額給付金騒動まで引き起こした。もっとも、政治家は常に、国民にバーチャルな夢を与えるのが職業だが。さらに、「食の安全」がそうだ。「安心」は常にバーチャル世界の賜物だ。なぜなら、その食品が安心かどうかはマスコミで報道されなかったから「安心」という、バーチャルなイメージで成り立っているからだ。一方、「安全」は常にリアル世界に属している。少なくとも、物理的に様々な基準を経て「安全」とされているからである。「食の安全」の幻想にも「安心と安全」をこう引用した。
安全:具体的な危険が物理的に排除されている状態このように、バーチャル世界は心の中の世界、リアル世界が物理的な現実の世界と読みかえることかできる。今までは、バーチャル世界はともかく、リアル世界さえ大事にしていればよかったと考えてきたサラリーマン社会でも、如実にバーチャル世界の侵食が実感される時代となってきた。
安心:心配・不安がない主体的・主観的な心の状態
このように定義されると、自然科学系の人間などは、つい「安心」を軽視してしまう傾向があるが、そのような態度・判断は間違っている。「安心」は重要な問題なのである。
安心の問題が重要視されるのは、個々の人々は社会サービスに依存して暮らさざるをえない状態にあり、状態を自分でコントロールすることができず、全体状況を知ることも困難なためである。一連の不祥事によって、不安が発生している。人々の安心を得るためには、システムが安全でなければならないことは言うまでもないが、それだけでは十分ではなく、関係者からシステムが安全である、との信頼が得られていなければならない。「安心」とは安全についての信頼感である。(食の安全Wikipedia)
情報漏洩不安(バーチャル)が会社組織(リアル)を破壊する
それは、個人情報の過度なセキュリティーが、社員同士のつながりさえ破壊を始めた現実である。NBオンライン社員が壊れる【3】憂鬱なオフィス〜あなたは監視されているという記事には、隣の部署に入るにも、上司の承認が要るオフィス。際限なく増える社内手続き──。仕事の手順から書類やパソコンの保管まで、ルールの増殖はとどまるところを知らない。コンプライアンス(法令順守)や情報保護の名の下、オフィスは不自由さを増し、憂鬱な場所になる。やる気を失う社員、そして新たなコスト負担を強いられる会社。誰のため、何のためのルールなのか。理念なき管理強化が社員と会社を蝕む。そこにある社員の姿は、すでに人間らしさがどこにも見えない。絶え間ない長時間労働、疲れきった顔。メールさえも監視される。記事の冒頭で富士ソフトの例が出てくる。
午前8時50分。9時の始業時刻を前に富士ソフトABC九州事業所(福岡市)は「ラッシュアワー」のピークを迎える。ラッシュといっても電車が込み合うわけでも道路が渋滞するわけでもない。会社の入り口の「ゲート」に社員の行列ができてしまうのだ。これほど人間不信に満ちたシステムになれば、情報漏洩は防げるかもしれない。だが、それでは彼らのやる気を削ぎ、もっとも大切な社員同士の信頼をなくす。疑心暗鬼というバーチャル世界に食い殺された社員達は、こうしてリアル世界の会社から抜け落ちる。
ここで働く約300人の社員を待ち構えるのは金属探知機とX線探知機。行列ができるのは、厳重な保安検査を実施しているからだ。
ゲートの前にたどり着いた社員は、中身の見える透明な袋に、財布や手帳、弁当、たばこといった手荷物すべてを放り込む。そして、袋をX線探知機の ベルトコンベヤーに載せ、自らは金属探知機をくぐる。無事チェックが済めば荷物を受け取ってオフィスに向かう。もし警告音が鳴れば、ポケットから出し忘れたものを警備員に渡し、再度金属探知機を通る。空港の保安検査と見紛うばかりの光景が毎朝繰り広げられる。
私物を自由に職場に持ち込ませないのが同社のルール。事前登録した携帯電話や財布といった例外はあるが、原則として職場と完全に遮断されたロッカーに入れる。
金属探知機とX線探知機の導入費用は約1600万円。警備員の人件費は月に200万円かかる。これだけの費用と手間をかけて厳重な管理体制を敷いているのは、情報漏洩を防ぐためだ。
カメラ付き携帯電話や、大容量のUSBメモリーなどを誰もが普通に使うようになった。富士ソフトABCは職場に私物の持ち込みを許せば、情報流出のリスクが高まると考えている。