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抜き書き「“混とん”に飛びこめ!MITメディアラボ所長 伊藤穰一」

10月3日に「クローズアップ現代」で“混とん”に飛びこめ!MITメディアラボ所長 伊藤穰一という番組が放送された。佐々木俊尚氏が、ネット上のあらゆるブログの中から選び出して紹介する人を「キュレーター」としているが、ここに登場する伊藤穰一氏は、異分野の人と異分野の人をつなぐ「コネクター」だという。解説には、

社会が急速に変化し、混とんとする現代。常識を覆すような革新=「イノベーション」が求められる中で、世界から注目を集めるのが伊藤穰一さん、46歳。去年“イノベーションの殿堂”と称されるMITメディアラボの所長に抜擢された。大学は中退、専門に学問を学んだ経験はない。クラブDJで生計を立てたり、IT企業を創業したり、投資家やNPOの代表など多様な分野で経験を積んできた。期待されているのは、異分野の人と人をつなげる「コネクター」としての力。これまで接点がなかった分野を融合させ、そこに新たな価値を見いだすエキスパートと評価されている。世界をどう捉え、どのようなイノベーションを生み出そうとしているのか?ロングインタビューで、伊藤穰一さんに迫る。(“混とん”に飛びこめ!MITメディアラボ所長 伊藤穰一)
タイトルの“混とん”=カオスについては、伊藤氏が若いころの恩師ノーベル賞科学者の福井謙一氏の言葉「君はカオスを学べばいい。」という言葉からだという。今回は、VTR+ナレーション部分を省き、国谷キャスターと伊藤氏のインタビュー部分に絞った。

国谷 今までの(メディア・ラボ)所長の方々というのは、みなさんPHD博士号を持った方だっったということですけれども、伊藤さんは大学を出ていらっしゃらないんですけれども。その異文化の方々をつなぐコネクターとしての役割が期待されて所長に就任された。自分が、ご自身で選ばれた理由というのはどう見ていらっしゃいますか。

伊藤 多分、いろんな要素があると思うんですけれども、多分、そこの雰囲気が、DNAといったような雰囲気がぴったり合ったというような、一番メインだと思うんですね。DNAというと、まず、メディア・ラボの特徴は、我々は英語では、アンチ・ディシプリナリー(専門分野にこだわらない)という言葉を使っているんですけれども、一つの分野にまとまらない人、悪い言い方にすると仲間外れにする、だけど、結局何かやりたいんだけど、どこにもはまらない、だけどメディア・ラボだったらなんとかなるような学生、先生、プロジェクトが全部メディア・ラボに集まっていて、私も、人生、いろんなところでいろんなことをやろうとしたんだけど、自分のやりたいことって、一つの組織にまとまりきらなかった。そして、そういう人たちの集まりなんで、そういうこう、そういう人たちの集まりをちゃんと理解して、自分もそういう人だっていうのがDNAということですね。

国谷 とにかく、若いころからの経験をずーっと積み重ねていくとカオスかなという感じもしないですけれども。ご自身は自分を違和感があるところの方が、居心地がいいとおっしゃって。

伊藤 居心地があんまりいいと、学びは止まる。どうやって学ぶかというと、違和感がある環境の方が、学びが起きるわけですね。なぜ、こうなって。なんで、僕がこうなって、こうなる、それが毎日繰り返しあるとすごく学ぶ。もちろん、お金とかは大事なんだけれど、今、いくらお金を蓄積しても、あの自分の人生が破たんする可能性がたくさんあって、今は、いろんな国の言語を覚えたり、いろんな人を知ってたり、ネットワークを持ってる事の方が、多分、生き残るためのスキルが大きくて、自分に投資をしていかなければいけない、自分への投資って何かというと、自分の学び、その学びを起こすためには、楽しちゃだめなんですね。

国谷 でも、それにしても異文化をコネクトできることが、なぜ今イノベーションにつながるのか。

伊藤 はい。今、我々の世の中というのは、想像できない事とか、準備・プランが、準備ができない。想像できない。あの、予想できないことがしょっちゅう起きている。今の世の中、すごいそうですよね。経済にしても。そうすると、なぜ、想像できないかというと、周辺の視野が狭いんです。みんな。我々の世界というのは、集中してきちっとお利口さんの人間たちが集まって、企画を立てて言われたとおり、ものをこなすというのが、ちゃんとした人、ちゃんとした会社。ちゃんとした人、ちゃんとした企業っていうのは、予想外のものはあっても見えない。新しいイノベーションというのは、突然、こっちからやって来るものとか、ここにじつはチャンスがあるから、会社を変えようとか、それを変えるために、周辺を見るために、何が必要かというと、自分でクリエイティビディて自分で規制している。今のイノベーションには、一番何が必要かというと、クリエイティビティでコネクターとか異文化に何が重要かというと、自分の固まった考え方を壊すために、違う世界につないでいくとだんだんそういうクリエイティビティが出てくる。

国谷 つまり、偶然性とかセレンディピティ的なものを期待していれば、何か面白いものがきそう、想像しないものが出てくるかもしれないという。

伊藤 そうですね。セレンディピティ(思わぬものを偶然に発見する能力・偶発性)、偶然性の中でも、毎日、定例ミーティングのように規格通り世の中を動かしている人というのは、セレンディピティが起きでも、気が付かなかったりする。いくつか有名なストーリーがあって、一つは、画面に点をつけてそれを見ててください。周辺に色付けると、みんな見えるんだけれども、この点を見てると千円あげますというと、見えなくなっちゃう。セレンディピティというのは、しょっちゅう起きてるんだけど、それに気が付かないというのが結構重要で、われわれ、集中することがいい事ってみんな思っているけど、集中すると、キノコ狩りの人もそうなんだけど、キノコって探していると見つかんないけど、ふぁっとフォーカスを引くと、パターン認識が起きて、キノコって見える。キノコ狩りとおんなじような感じで、新しいチャンスを探すときというのは一生懸命考えていると、どうやって儲けるんだろうと、一生懸命考えていると、気が付かないんで、そのセレンディピティに気が付くような頭と環境づくりがメディア・ラボの課題なんです。

国谷 もっともっと面白い人たちが、分野を超えていわゆる今までの普通の社会では居場所のないような人たちが集まった人たちのネットワークをもっと広げていきたいと、そういう。

伊藤 はい。今のインターネットというか、今の世の中見ていると、面白いところ、いろんなところでイノベーションが起きている。コストもそんなにかからないんで、何が一番バリューがあるかというと、多様性というのに大変バリューがある。スコット・ペイジという学者が書いているDIFFERNCE(和名「多様な意見」はなぜ正しいのか 衆愚が集合知に変わるとき)という本の中でも、同じような人間が、すごい賢くても、一生懸命考えても、解けない問題でも、すごい多様な人間がいると、いろんなモデルをそこにつないでみるんで解決する可能性がすごく上がる。あとは、ネットワーカー(人脈作りに熱心な人)ってすごくネガティブなイメージが日本人、アメリカ人もそうですが持っていて、ネットワーカーってどこかパーティーに行って、偉い人順から名刺交換して回るというイメージがあると思うんです。ただ、それってすごく単純すぎて、偉い人って必ずしも面白くないし、

国谷 情報を持っているとは限らないですよね。

伊藤 そうですよ。情報とパターンなんですよ。偉くなくてもこの人は、たとえばその、カオスについての考え方がすごく特殊で、いつかどこかの会議でこういうことがあったら、これ、つなぐと面白いっていう素材を探しているわけなんで。絵の具の素材を探しているときに、一番濃い色ばかり探しているのではなくて、いろんな色の素材があったほうがいいのと同じように、自分が会ったことのないような人間に会うことが、重要なのと、後は、話をしたときに、情報もそうですし、心もオープンな人の方が良くて、そういう人たちってお互い段々、出会うもんなんですよね。

国谷 政治とインターネットと融合した時に、合意形成の在り方が変わるのではないか。まあ、そうあるべきだと長い間、伊藤さんは、おっしゃってきたわけで、だからこの最近の動きを見ていると、インターネットで民主化が進む例もありますし、一方で、民衆が操作されているような、そういう逆のことも起きてますよね。諸刃の剣と言いますか。

伊藤 多分、今のインターネットの使い方というは、それこそ、悪い政府をひっくり返すとか、隠れている情報を出すとか、本当に破壊をする、悪いものを破壊するというところはだいぶ進んできた。破壊した後に組み立てることが次で、組み立てたり、運営したり、それこそ、憲法を書く。今、リビアで憲法にもっと国民の声を入れて、きちっとした憲法を作ろうということもいろいろ考えたりするんで、多分、次はそこが大きくて、すごく面白い波形がこの数年、出てくるんだろうなと思いますよ。

国谷 ネットが発展して人々がつながることによって、新しい政治モデル、間接民主主義に代わる新しい政治モデルが、生まれる可能性って近い将来、ありますか。

伊藤 結構あると思います。実験的に、大きな国だと複雑なんでなかなかできないんだけれど、小さな国、北欧とか、州政府とか、都市とかは、結構あるんですよ。一緒にみんなで予算を決めるとか、法律を書くときもみんなを巻き込むとか、あとはデリバラティブ・ポーリング(討論型世論調査)って英語でいうんですが、国民を呼んでディスカッションして、みんなで議論して、議論した後に投票とか世論調査するプロセスというのがあって、これを実験的にやってネットでつないでいるんですけれど、市民の力、実はこれすごくつながっていて、世の中、複雑なんでトップが考えても理解できないけれど、みんなバラバラでやると、実はこの複雑性をマネージできて、これからの時代、大きな戦争だとか、今、ちょうど経済危機とか、環境問題も僕は、こういう現場から答えが出てくるんだなと思う。議論はみんな飽きちゃった。とにかく作ってみよう、ダメだったらまたいじってみよう、今のインターネットだと、そんなにコストかけないで、作っちゃえる。これは政府にも、巻き込むことができると思います。

国谷 今、伊藤さんとしていろんなことやってこられて、次何に面白がろうとしていますか。

伊藤 それが、一番楽しみにしているのが、全く予想していない、全く想像できないような新しい、さらに新しいものを探すのが好きだ。例えば、うちの先生の枠がまだ余っているんで、数百人の先生が、300人以上かな、みんな面接して、その中には、シェフもいればマジシャンもいれば、バイオリンを弾く脳科学者もいる。みんなこんなものに興味を持っている、こんな才能ある人たちがたくさんいて、自分が想像できないことをできたり、想像できないことを考えたりする人たちがものすごくたくさんいて、日常的に出会っているんですよ。そこの中で、なんかつなぐことによって、これがメディア・ラボの一番の目的なんだけれども、自分が想像できない人と自分が想像できない分野で、何かインパクトあることをバーンと出すことが重要なんで、何を次やるかというと、いま想像できないことを次にやりたいなというのが夢です。

国谷 何なんでしょうね。楽しみですね。


追記 クローズアップ現代のホームページでは、放送まるごとチェックが公開された。(ただし、国谷キャスターのセリフは抜けている)


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