モラル低下の原因は社会構造にあり
前項「セキュリティって何? 」で、社員同士の信頼回復を訴えたが、現実問題、現代の日本ではそれが不可能だということに気がついた。コストカットのために、正社員を減らし、派遣社員やアルバイトが増えている。隣の席に座る社員が昨日と今日で違うことが日常である。信頼関係を作るには大変時間がかかる。そんなことに気を使っている暇はないのだ。したがって、セキュリティシステムに頼らざるを得ないのが実情なのである。
最近の若者は自分勝手というが、社員教育などなされていない人間が社員の名刺を持って動いている。すべてはマニュアルどおりに。だから、仕事を終われば自分の世界に帰っていくだけである。派遣会社もまた、下請け会社のようなもので、派遣先からみればどんな社員がやってくるかわからない。いわば、社員そのものを丸投げしているようなものだ。
僕は「腐った饅頭は捨てるだけでよいのか」でこんなことを書いた。
会社を人間の体にたとえれば、腐った饅頭は動脈硬化と同じだ。体のあちこちに動脈硬化ができて現場に血が通わなくなっている。現場に使い捨ての非正規社員を当て、管理職にのみ肥え太った会社ではいつ脳出血で倒れてもおかしくない。現場にこそ、力を注がなくてはならないのだ。そうでなければ、その会社自身が腐った饅頭となって捨てられるのが落ちである。だが、それでも私たちは生きていかねばならない。自らが腐った饅頭にならないために。