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素人だから言えることもある

アマゾンが流通を握るという事(ホームサーバの戦い・第116章)

アマゾンが出版社に迫った「価格決定権」と「商品選択権」

日経新聞に「アマゾン「キンドル」上陸前夜、攻防戦の内幕 国内出版社に2つの壁、なお続く綱引き」という記事があった。アマゾンといえば、世界最大の書店である。出版社は、書店の意向を無視しては営業が成り立たない。アマゾンがキンドルを国内投入するために、2つの権利を要求しているという。記事にはこうある。
著作物の小売価格を維持する「著作物再販適用除外制度(再販制)」に守られてきた国内出版社にとって、「価格決定権を誰が持つのか」を巡るアマゾンの提案は受け入れがたいものだった。これが第1の壁となって立ちはだかったのだ。

アマゾンが各出版社に提示した「KINDLE電子書籍配信契約」という契約書には、アマゾンが得る手数料率や出版社が負担する費用など価格に関する細かな規定がつづられている。その中に、「小売価格はアマゾンが決めることができる」という旨の記述がある。アマゾンからすれば、小売店、つまりアマゾン自身が価格の決定権を持つことは所与の条件だった。(アマゾン「キンドル」上陸前夜、攻防戦の内幕 国内出版社に2つの壁、なお続く綱引き)

紙の書籍は、再販制に守られ、全国どこで買っても同じ価格だった。ところが、電子書籍は再販制の対象にならないと公取委は言っているという。
再販制は、独占禁止法の規定上『物』を対象としています。一方、ネットワークを通じて配信される電子書籍は『物』ではなく情報として流通します。したがって、電子書籍は再販制の対象とはなりません」(公取委のホームページより)(アマゾン「キンドル」上陸前夜、攻防戦の内幕 国内出版社に2つの壁、なお続く綱引き)
そうなると、紙の価格よりも電子書籍は自由に価格設定ができてしまう。出版社はこれを嫌った。
各電子書店は、電子書籍の価格を自由に設定できるはずだが、現実には「各出版社と協議のうえ、双方の合意に基づき価格を決める」としている。日本の商慣習を重視し、事実上、出版社の希望小売価格を受け入れているのが実態である。


国内出版社はアマゾンに対しても同様に、価格について「強要はできないが、理解してほしい」という立場をとった。だがアマゾンにとっては「アンビリーバブル(信じられない)」な状況に映った。国内電子書店と並列になれば、戦略的な価格を「売り」としてきたアマゾンにとって参入する意味がなくなってしまう。これが長らく平行線をたどる大きな契機となった。(アマゾン「キンドル」上陸前夜、攻防戦の内幕 国内出版社に2つの壁、なお続く綱引き)

これは、それぞれの電子書店が小さく、出版社の意向を聞かないと販売すら不可能になるからだ。アマゾンはそれと比較にならない。いわば、出版社とアマゾンの力関係が変わってしまっているのだ。さらに、アマゾンは、「商品選択権」を要求している。
出版社は、キンドル以外の電子書籍配信サービスに提供する電子書籍をすべてキンドルに提供するものとする。キンドル向け電子書籍として提供されていないタイトルがある場合、アマゾンが自己の裁量および負担で電子書籍を作成し配信することを、出版社は許諾する」――。

つまり、すでに存在する電子書籍はすべて、アマゾンのキンドルにも置かなければならない、という条件。存在しなくとも、アマゾンの判断で電子書籍化することを認めてほしいという内容で、出版社はキンドルに出品するか否かを決める立場にないという旨が明記されている。この条項は、価格決定権と合わせてさらに出版社を追い詰め、後ずさりさせる結果を招いた。(アマゾン「キンドル」上陸前夜、攻防戦の内幕 国内出版社に2つの壁、なお続く綱引き)

高騰化する単行本をより安く手に入れることができるキンドルの参入はユーザーにとって大変ありがたいことだが、そのことが返って国内の書店に大打撃を与えるだろう。

アマゾンがコンテンツメーカーとユーザーの間に参入することで、今までの流通システムが根本的な改革を迫られることになる。だからと言って、アマゾンという巨大書店を拒否することはできない。今更、ネットを離れて何ができるというのだろう。

国内だけで売る時代は終わった

海外の安い人件費で作った製品を日本国内で高く売ることができなくなっているのは、 [お題]日本の家電不振の単純な原理で見たように、限界にきている。それは、ぎりぎりまで安くしても、国内の高い管理職の給料が払えないからだ。だから、巨大企業は、どんどん収縮し、より特化していかざるを得ない。そして、その企業しかできないという商品を海外展開して生き残るしかないだろう。国内で完結するシステムはすでに終わったのだ。

ようやくテレビはネットの重要性に気付いた(2)(ホームサーバの戦い・第111章)佐々木俊尚氏が言っていた、

佐々木 今までのテレビっていうのは、言葉ごとだったんですね。日本語とか英語とかフランス語、そうすると日本語のマーケットというのは、1億2000万しかないと思われてた。今、猪子さんがおっしゃったように、世界中が勝負にできる、別に、必ずしも、60億人、70億人と勝負するということだけではなくて、同じ趣味の人とか、たとえば、日本のオタク文化ですよね。萌え系のコンテンツが世界に売られている状態、あれがしかもYouTubeのような世界中のプラットフォームに流れていることを考えると、全地球のすべての人を対象にするんじゃなくて、同じ特定の分野の人だけを対象にする、今までだったら日本国内でそれが何万人かぐらいしかいなくて、大してお金もうけがありませんでした。でもこれが、日本には何万人かだけど、世界中にすると実は何百万人かいるかもしれません。そしてそれは十分ビジネスが成り立つよ、横展開することで、新しい市場、マーケットが出てくる。これってすごく期待できることですよね。(ようやくテレビはネットの重要性に気付いた(2)(ホームサーバの戦い・第111章) )
書籍にしろ、テレビ番組にしろ、日本国内のみを対象にして販売してきたことを世界中に向けて売ることができる。出版社は、今までの日本国内向けという発想を捨て、アマゾンという流通システムを使って世界中に売ることを考えるべきなのだ。
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