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映画盗撮防止法と国会質問

 今日、8月30日より「 映画盗撮防止法」が施行される。これについては、すでに「著作権法の「非親告罪化」とアメリカ年次改革要望書」にこう触れた。

 前項「オリジナルとメディア」で映画館盗撮防止法をとりあげたが、実はこの映画館盗撮防止法、国内の映画館や映画会社からの要望ではなくて、アメリカの要望だったという。それを知ったのはニュースサイトGIGAZINEの「著作権の非親告罪化やP2Pによる共有の違法化は誰が言い始めたのか?

 さて、次の文章を読んでもらいたい。

II-A-5 . 映画の海賊版 海賊版DVD製造に利用される盗撮版の主要な供給源を断ち切るために、映画館内における撮影機器の使用を取り締まる効果的な盗撮禁止法を制定する。

( 日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書 2006年12月5日(仮訳)20頁)

 この米国政府要望書は年次改革要望書と呼ばれている。この年次改革要望書によって日本政府のアメリカの要望を次々と成し遂げられていった。

 この年次改革要望書の映画に関する要望書が昨年の12月5日である。それなら衆議院でどんな質疑があったのだろうか。検索してみた。
平成19年5月9日衆議院経済産業委員会から(リンク先の左欄から5月9日をクリック)

○川内委員(民主) 内容としては妥当なものではないかとおっしゃるわけで、私は、ちょっと詰める必要がある部分があると思うんですけれども、それはどういうことかというと、本法案の第四条で、映画の盗撮を行った者は、著作権法第百十九条第一項の規定を適用する。すなわち、例えば、高校生が携帯電話のムービー機能でほんの十秒ぐらいスクリーンを撮影しただけで、懲役十年以下もしくは一千万円の罰金という法律の構成になっているわけでございます。
 本来、私権というのは、個人的な利益というのは自分の努力で守らなければならないわけでございますが、これは、特別法にしていきなり罰則をかけられるという法律の構成になっていますから、今後、映画館で携帯電話を出してちょっとでも撮影をしたら、懲役十年、罰金一千万ということになってしまうということでございます。
 しかし、この規定については、著作権法第百二十三条の、告訴がなければ公訴を提起できないという規定が適用される、すなわち親告罪であるという説明を受けましたが、文化庁、御確認をいただきたいと思います。
○吉田政府参考人 現在準備されております法案におきましては、著作権法第三十条一項を適用しないとするとともに、同法百十九条に規定される著作権侵害の罪による罰則の対象とする旨が規定されております。
 一方で、法案を見る限りにおきまして、同条の罪を親告罪としている著作権法第百二十三条の規定につきましては特段の例外規定を設けていないものと承知しておりますので、親告罪としての位置づけは変わらないものというふうに理解しております。
○川内委員 ただ、現行犯の場合には即座に逮捕できるということですね。
○吉田政府参考人 逮捕という局面におきましては、先生御指摘のとおりかと思います。
○川内委員 この法律の書き方として、映画の最初から最後まで一本丸々撮った場合にはとか、限定がついていないんですね。録画すること、録音すること、これは著作権法上では連続して物に固定するというふうに書いてあるんです。この連続して物に固定するという言葉が、何秒ぐらい撮れば録音録画することになるのかということは議論になるでしょうけれども、しかし、とにかく大変な法律なわけでございます。
 もう一つ文化庁に確認をさせていただきますが、繰り返し申し上げますけれども、高校生等があるいは中学生等が、軽い気持ちで名場面を、自分が気に入っている場面を携帯電話のムービー機能でぽっと撮りました、そうすると犯罪者にされてしまうという法案でございます。
 著作権は、本来、私権を定めているものであり、映画業界がもし仮に大変な被害をこうむっているのだということをおっしゃるのであれば、その被害の防止のためには、本来、権利者が自主的な努力をまずすべきであって、いきなり警察に通報して逮捕してもらう、何かガードマンがわりに警察を使うというようなことがあってはならないというふうに思いますが、文化庁、いかがでしょうか。
○吉田政府参考人 現在準備されております法案におきましては、ただいま先生御指摘の点に関連する条文もございまして、映画の盗撮による被害を防ぐために、まずは盗撮そのものを行わせないようにすることが重要でございますので、関係事業者によって盗撮防止のための自主的な取り組みを行うことが義務づけられているわけでございます。
 今回の法案は、海賊版取り締まりの実効性を高めるために必要最小限の特例を用意するものであるというふうに認識をしておりますけれども、関係業界等におきまして、この法律の趣旨を踏まえまして適切な運用がなされることを期待しておるわけでございます。
○川内委員 経済産業省にも同じ質問をさせていただきますが、警察に通報する前に映画関係事業者の相当な自主的な努力が行われなければならないというふうに思いますが、まず事務当局の御見解をお聞かせください。
○肥塚政府参考人 先生の御指摘のとおりで、映画業界自身の取り組みということが大事だというふうに思っております。
 これまでも、映画業界では、協議会を設けて、盗撮防止を訴える映像の上映ですとかポスターの掲示というようなことをやってきておりますし、それから、昨年の東京国際映画祭の際にも、映画盗撮の防止をテーマにしたセミナーを開催するというようなことで、対策の強化に取り組んできているものというふうに思っておりますけれども、さらにいろいろなことで努力をすべきだというふうに考えております。
○川内委員 定性的な努力というのはされているんでしょうが、今、赤羽先生が、いやいや法律に書いてあるじゃないかとひとり言をおっしゃったんですが、今まで、映画業界を指導する経済産業省は、これらの被害が生じているとするならば、自主的な努力が大事なのだ、例えば、映画館に三脚つきのカメラを持ち込ませない、あるいはスクリーンの両わきにガードマンを配置してみたらどうかとか、あるいはカメラを預かるロッカーをつくってはどうかとか、そういうような具体的な指導は一切しておりません。これはきのうレクで確認しました。
 そういう中において、今まで指導していないのに、いきなり業界からこのような法案の要望が出て、法案をつくりました、後は努力してちょうだいねとただ定性的に言うだけでは、私は、この法律は大変な法律ですから、今御説明したとおり、その運用に当たっては、重々、より具体的な役所の努力というものが必要になると思うんですね。
 「映画の盗撮を防止するための措置を講ずるよう努めなければならない。」というふうに法律に書いてあります。この「映画の盗撮を防止するための措置」というものを具体的に関係各省で業界に対して指導する。
 今私が申し上げたとおり、ビデオカメラ、三脚などは映画館内への持ち込みを禁止する、あるいは持ち込み禁止を入り口に大きくはっきりと表示する、あるいは入り口でビデオカメラを預かる。撮影者がいるかどうか劇場員あるいはガードマンが監視をする、あるいは監視カメラを設置する。撮影者がいたら、劇場員あるいはガードマンが、あなた、捕まりますよ、犯罪ですよと何回も注意する、あるいは外に出てくださいと排除する。
 それでも頑強に抵抗して撮影を続けている場合には警察に通報することができるというような、より具体的な細かい業界との間の運用の基準というものをつくっておかなければ、法律上はいきなり逮捕していいわけですから、逮捕は警察だけができるわけではなくて、現行犯逮捕の場合には劇場員も逮捕できますから、高校生が携帯電話で撮っていました、これは逮捕できるんですよ、劇場員も。
 そのようなことにならないように、きちんとした運用の基準というものをつくるべきであるというふうに私は思いますが、経済産業省、いかがでしょうか。
○肥塚政府参考人 この法案が成立しました場合には、円滑に実施されるように、関係省庁と相談して連携協力したいというふうに思っておりますけれども、今先生の御指摘のとおり、盗撮そのものを起こさせないような措置、映画関係者による努力というものが必要だと思っております。
 具体的に、今お話がありましたような、録画録音機器の持ち込み禁止あるいは持ち込みの検査、預かり等といった対策をとる。観客に映画の盗撮の発見、防止のための協力を求める。従業員に対する対応マニュアルをつくる、あるいは法律の内容、マニュアルの徹底指導をする、あるいは実地訓練をする。それから、上映の館内の監視ですとか防犯システムを構築するというような具体的な措置が考えられるというふうに思っております。
○川内委員 大臣からもちょっと御見解を聞かせていただけますか。
○甘利国務大臣 この法律は委員長提案でありますから、委員長に聞いていただくのが一番いいのかもしれませんが、私も映画関係者といろいろ話した経験があります。与党議員としてはこの法律にかかわっておりますので、そういう点からお答えいたします。
 まず、いきなり携帯電話で十秒撮ったら逮捕されちゃうと。しかし、法律というのは全体で構成要件をなしていますから、この一条の目的を読む限り、委員長が御提案のこの法律を読む限り、一条で、「映画の複製物が作成され、これが多数流通して映画産業に多大な被害が発生していることにかんがみ、」つまり、映画の作品として流れていることにかんがみと。十秒間撮ったものが作品として流れるとは思えない。ですから、全体の法律構成で、それは当然、そんなところで逮捕したら不当逮捕と言われるに決まっているのであります。(以下略)

 この質疑にあるとおり、法律の取り締まり次第ではトラブルが起こることも予想される。
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