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素人だから言えることもある

ものづくり国家日本の悲劇

13億の中国市場は無視できない

 「勝ち馬に成りたがる中国(ホームサーバの戦い・第33章)」で、僕は中古独自のCBHDを取り上げた。日本は、事実上、中国を離れて生きてはいけない。家電製品や食料品が安いのも、製造現場が中国にあるからだ。ところが、日本製品を輸出するには、中国の物価があまりにも安いために成り立たない。ひたすら、日本は欧米に向かって輸出することしか出来ないのである。中国→日本→欧米という、非常に偏った貿易関係が、不況以前は当然だった。今回の騒動は、まじめに特許料を払っていては、中国の家電産業は成り立たないという事実を如実に示した。もちろん、中国国民の貧しさが、海賊版の横行を許しているという側面がある。だが、それが正常化しても、中国にはブルーレイは普及しないだろう。

 しかし、今回の不況は、欧米の消費を抑え、日本は改めて、中国を市場と考えざるを得ないことになった。少なくとも、富裕層に対しては。ところが、CBHDの存在は、日本の唯一の収入源である知的財産権を否定することになる。中国13億人というマーケットは無視できないので、ローカライズは仕方ないと考えざるを得ない。しかし、同じ作品が、中国では700円、日本国内は2800円となれば、密輸してでもと考える人が出るかもしれない。

日本の道はいつかのアメリカの道

 かつて、アメリカのホームドラマを見て、「これじゃ日本は勝てないわけだ」と思った人も多かった。戦争中、灯火管制の中で暮らした日本人は、戦後のテレビで見たアメリカの家庭の現実、大きな冷蔵庫、広いリビング、テレビ、自動車…、溢れかえる物を見て、「アメリカに追いつけ、追い越せ」と高度成長を走りきった。

 現在、アメリカの家電売り場は、日本製品があふれかえっている。しかも、中国製の日本製品が。今回の不況で、自動車産業が壊滅的な被害を受けたが、これはアメリカのものづくりの現場が、知財ビジネスに移行しつつあることを意味している。

 事実、アメリカの映画産業の強さは、映画がテレビ局を握り、スタッフやタレントをテレビで育て、映画ビジネスとして世界に売るというよく考えられたものである。最近、日本でもテレビと映画が連動してきたが、アメリカほど金をかけているわけではない。

アイデアと作ること

 そもそも、知財とは何であるか。最初は単なるアイデアである。それをヒットするアイデアに育てるために、作る作業が必要になる。作るという行為にも、やはりアイデアと努力が必要になってくる。最初のアイデアを形にすること、これが知財になってくる。

 映画なら、ある脚本家のアイデアに対して、それを映画化するには、どんな監督が良いか、とかどんな俳優が良いかと考え、ヒットするもに作り上げていく。そして、それを何度も繰り返していくうちにヒットの勘というものが生まれてくる。アイデアは個人のものだが、それを育てるには、優れた技術がいる。こうして作品となる。

 一方、ものづくりにしてもアイデアの集積である。だが、職人一人ひとりが自分なりの作品を生み出していくと、量産ができない。量産をするためには機械化したり、低コストの新興国の人件費を当てにしたりする。この瞬間から、アイデアは個人のもでなくなる。映画が、あくまでも映画監督やタレントの顔が見えているのに、量産しているDVDには製造者の顔が見えない。日本の物作りの本質は、顔の見えるコンテンツでなくて、顔の見えないコンテナであった。顔が見えないから、海外で安くたくさん作ることができる。そして、どんどんその技術は流出する。日本は知財を特許で守っているという。ところが、海外の製造者たちは、その技術を元に、日々新たな技術を生み出している。それは、日本の特許か。海外の特許か。中国のCBHDは、日本のHD DVDの技術を元に、中国独自の技術を新たに作り出したものだ。

 日本のコンテンツは漫画やアニメであるという。それなら、アメリカ並みに、クリエイターを作るために金を出しているか。たしかに、ヒットすれば、儲かるだろう。だが、製造現場は、困窮を極めている。また、アニメの大多数も中国で作られている。これらのコンテンツの権利はどうなっているのだろう。そこで学んだ技術で、作品を作られても誰も訴えることは出来まい。その作品は結局、作者となった製造者のものでもあるからだ。

知財で食うこと、技術を継承すること

 どこか、日本の「ものづくり」がゆがんでいる。特許侵害で告訴があるたびに、ずいぶん、他人のアイデアで食っている人間がここにもいるのだなと思う。技術が海外に流出するということは、日本国内でとどめることが出来なかったという意味であり、会社も国家もその本当の価値を知らなかったというに過ぎない。もし、それをとどめたいと思うなら、アメリカのように、金を払って、世界中のクリエイターを集め、教育を施すことで初めて技術は継承されたということになるのだから。
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