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CJIC2009から想像するネット家電の未来(ホームサーバの戦い・第35章)


Twitter講義ノート


 衆議院選投票日の前日、CNET Japan主催のCNET Japan Innovation Conference 2009「ネットサービスで変革する情報機器・家電の世界」に出席した。面白いのは、逐次流される編集部のTwitterが単なるつぶやきを越えて、講義ノートになっていることだ。


 普通、Twitterとは、一言コメントのようなものであり、リアルタイムで流されることに意味がある。したがって、その場その場で交わされた言葉は、それぞれ会話になっても、無駄な言葉が多く、まとめる気にすらならない。しかし、今回のように、改めてビデオにされても長すぎて見たくないし、講義文をPDFで発表されても堅苦しくて読む気も起こらない。もちろん、現場で出席するのが一番だが、出席できなかった人にはどのようなフォローをすべきか。改めて、編集部のTwitterをまとめてみて、その価値がわかってきたのだ。したがって、このエントリーはこのTwitter文を元にして、想像の翼を羽ばたかせてみたい。


コンビニ冷蔵庫とカメラ


 最初のフリービットの石田氏の発言。



いまのネット家電は、家電にネットを足す、という発想。 でも、ネットありきの社会で、行為自体をデザインすることが求められている。たとえば冷蔵庫はあの形である必要があるのか?というところから。

冷蔵庫は食べ物のキャッシュ、と考えれば、コンビニから足りなくなったら補充する、という発想もありうる。(cnet_editorialはTwitterをつかっています!)


 なるほど、冷蔵庫とは貯蔵庫。データを保存する場所は、別に自分が持たなくてもいいじゃないかという発想。これはクラウド・コンピューターの発想にもつながる。パネルディスカッションでも、Google日本社長の辻野氏が



辻野:当時RPGなどを使って議事(擬似か?)編成局を持ってくると考えて、コンピューターとしてのテレビとそのビジネスモデルを作ろうとした。

辻野:今は完全にクラウド。家電もそういう方向。ServersManはネットのあっち側をこっち側に持ってきた。非常に隔世の感がする

別井:クラウドを考えれば、ネットのあっち側こっち側を意識しないようになってきた。でも一般の人に対しては設定が面倒だったり、難しかったりすると思う。(cnet_editorialはTwitterをつかっています!)


 ネットと家電が融合すれば、どんな機種でもサーバーがつけられ、ServersManが活躍する。



ServersManはあらゆる機器で動くWebサーバサービス。iPhoneWindows Mobileにすでに対応しており、AndroidNAS版が開発中。PCにも対応していく
(中略)
ServersManはUSBメモリの代わり、ファイルサーバ、クラウドストレージとして使える。iPhone上でファイルを見ることもできる。iWorkMS Officeにも対応。
(中略)
ServersMan Appsの例として、ボイスレコーダーのデモ。いま録音したものを、アップロードすることなく、ウェブからアクセスして聞けちゃいます

ServersManは携帯電話、PC、デジタル家電と裾野を広げていく。移植しやすい言語で開発しているので、広げやすいとのこと。第一弾として、ServersMan Scooop by EXEMODEが来月発売。「ヤシカ」ブランドをもつエグゼモードと組むそうです
(中略)
製品はビデオカメラ。撮影した上で機器をざくっとPCにさして接続すると、専用アプリが起動。「サーバ公開」を選べば、ServersManの自分のサイトで、今撮った動画が再生される。YouTubeとかに同時に投稿することも可能。(cnet_editorialはTwitterをつかっています!


 8000円のビデオカメラ。最後に登場したCerevoの岩佐氏もデジカメの宣伝をしていた。



CerevoCamはソーシャルメディア時代の新写真管理を実現。まだ見せていないとっておきの機能も

デジカメにありがちなパターン:休日夕方パーティ→写真送ってね!→でも疲れてて送れない 忘れてしまう

CerevoCamなら:鞄に入れておいても眠っている間に自動的に無線LANで転送。電源ボタンを自分で入れる必要なし

転送終了後には写真の保存先URLをメールで通知。携帯電話からCerevoLifeにアクセスして写真を選び、ブログやSNSにも投稿

写真によってはクローズドなSNSにアップ、みんなに見せたい写真はTwitterに。こんなCerevoLifeの使い方も。(cnet_editorialはTwitterをつかっています!)


 つまり、WEBにつながることで、パソコンに保存する手間をかけず(保存はメールで送る)にその場でWEBに公開できるということ。


どこでもビデオ


 二番目に登場してきたパナソニックの林田氏。ビデオのDIGAの話をメインに。



ブロードバンド環境の中で、「見るテレビ」から「使うテレビ」へ進化している。

DIGAのネットワーク提案は、LUMIX(デジカメ)をDIGAで楽しんでもらう。IPネット連携で、アクトビラコンテンツを楽しむこと、居間のDIGAを部屋で見るなど、ホームネットワーク機能。

さらにDIGAとケータイの連携、ドアホンやセンサなどの安心ネットワーク。(cnet_editorialはTwitterをつかっています!)


 このDIGAとケータイの連携とは、WEBの「Dimora」というサイトを中心にしたサービスだという。



「Dimora」、パソコンや携帯電話からDIGAへ遠隔録画予約ができるサービス。

Dimoraは、番組表をクリックするだけで録画できるので、簡単。PCのブラウザはIEとFireFoxに対応、

Dimoraは、キーワードを登録しておくと自動予約もできる。番組の取り逃しもないという。

録画済み番組のタイトルも、PCから編集可能に。

HDD残量が少ないときは、あらかじめ設定したメールアドレスに通知してくれる機能も。(cnet_editorialはTwitterをつかっています!)


 これまでは、敵対していたネットと家電がWEBを有効活用する関係になってきた。ケータイで録画予約できるということは、どこからでもビデオを使えるということだ。でも、将来的には、ビデオもクラウド化するべきだろう。つまり、各自のビデオ内に大量のビデオを保存するよりも、その保存スペースをクラウド化すれば(例えば、家電メーカーがそのデータを管理するとか)、セキュリティは万全になり、見たいときに簡単にネットを通して視聴できるようにする。それなら、これから増えてくる画像配信データを購入したとき、わざわざディスクに保存する必要がなくなる。もちろん、ディスクとしてコレクションしたいという人以外購入しないから、そんなサービスはいらないと言われればそれまでだが。


どこでもテレビ


 三番目に登場してきたソニーマーケティングの伊東氏、田島氏。



見るテレビからできるテレビへ--ブラビア。今ブラビアができること。これからブラビアが目指すできるテレビ

今までのテレビは見るだけモニターとしてのテレビだった

これからのテレビは双方向。見るだけではなくて知ることもできる。

ブラビアポストカード。アクトビラFeliCa決済。今ブラビアでできること。(cnet_editorialはTwitterをつかっています!)


 面白いのは、パナソニックが「使うテレビ」といっているのに対し、ソニーが「できるテレビ」といっていることだ。ビデオ側、テレビ側という立場の違いもあるだろうが、パナソニックが使いやすさを強調しているのに対し、ソニーはもっと積極的に能動的だといっているようにも見える。


 考えてみれば、ビデオは利用者がより主体的に動かなければ必要がないものだ。テレビは、ともかくスイッチをつければ放送が流れるという大変受動的な機器なのに対し、ビデオはかなりの操作技術を必要とする。もっともパソコンはそれ以上だが。


 だが、テレビもビデオも進化しなければ買ってはくれない。より多機能になっていかざるを得ない。ハイビジョンや地デジ化.は、新型機を買ってくれる大きなチャンスである。今までは、パソコンとテレビは敵対関係だった。しかし、積極的に取り込まざるを得なくなった。そうじゃないと、パソコンのディスプレイで事足れてしまうからだ。


 パナソニックと同様にソニーにも「Life-X」というWEBサイトがある。



Life-Xでは、自分でアップしたライフログは友達と共有して楽しめる。コンテンツにはコメントも付けられる。

マップビューで位置情報を見られる。時間軸で見るだけでなく、写真についた位置情報をみることができる。

ディズニーランドのどのアトラクションで撮影した写真かも一目瞭然

Life-Xから先ほど紹介したブラビアポストカード写真を送ることもできる

Life-Xの3つの役割。コンテンツの一元管理、マルチデバイス対応(PC、ケータイ、ブラビア)、共有コミュニケーション(cnet_editorialはTwitterをつかっています!)


 確かに、テレビやビデオがWEBに結びつくことで、生き延びようとしている。また、ケータイではワンセグテレビが普及して、どこでもテレビが可能になった。だが、そんなことを我々は望んでいるか。3月に、CNET Japanの「久夛良木健氏と麻倉怜士氏が描く、テレビの未来とは」というニュースに久夛良木のこんな言葉があった。



 久夛良木氏は今後、あらゆる動画がネット上に存在し、テレビはそれを映し出すだけの装置になると予言する。「IPTVになれば、無数のコンテンツが世界中に存在することになる。電波の場合は周波数が有限のため、チャンネルという概念があったが、これからはチャンネルではなく、コンテンツを見るというエクスペリエンス(経験)の時代になる」(久夛良木氏)
 ユーザーはいつでも好きなときに、好きな端末でネット上にある膨大なコンテンツの中から、好きなものを楽しめるようになるというのが久夛良木氏の考えだ。これまでユーザーは、テレビ局が放送した番組をリアルタイムに見るか、HDDレコーダーなどに録っておく必要があった。しかし今後は、ネットにつなげば好きなものを自由に視聴できるようになると予測する。
 「今まではチャンネルのあるものがテレビだった。しかしこれからは、画面が付いているものはみんなテレビだということになる。どこでもドアのように、見たいものがすべてどこでも見られるようになる」(久夛良木氏)(久夛良木健氏と麻倉怜士氏が描く、テレビの未来とは)


 確かに、将来的には、久夛良木氏の言うような状況になるかもしれない。コンテンツはクラウド化し、ネットを通せば、どこでも見られる。だが、そうなると問題になってくるのがコンテンツのセキュリティだが。



 また、麻倉氏は今後、テレビにまつわる4つのものがなくなると予想する。それは「ケーブル」「ディスプレイのフレーム」「スピーカー」「リモコン」だ。まず接続はすべてワイヤレスになり、ケーブルは不要になる。壁一面がディスプレイとなり、スピーカーも埋め込まれる。そしてユーザーの動きや視線、脳波などをテレビが読み取って操作される。(久夛良木健氏と麻倉怜士氏が描く、テレビの未来とは)


 まるでProject Natalの世界だが、むしろテレビ側の音声認識が発達してくれることを願う。



石田:エンジニアとして悔しいのは、2001年宇宙の旅で出てきたような、自然言語で質問すれば答えてくれるような世界ができていないこと(cnet_editorialはTwitterをつかっています!)


 テレビがパソコンに近づくのではなくて、パソコンがテレビに近づくことで多機能でも易しく使えなければ意味がない。


 CJIC2009のパネルディスカッションでは、日本の弱いところの話が出てきた。



辻野:Androidを使うと世界発信できる。日本の技術はすばらしいが、花開いていないのが悔しい。物を作れば匠(たくみ)の世界。

辻野:せっかく持っているタレントや技術力が生かせていない。ビジネスの全体的なプロデュースが苦手。Googleは米国初の会社だが、日本や米国にこだわるのではなく、インターネットの将来を考えたビジョンを持ち、「材料」を提供している
(中略)
石田:我々の技術はレゴブロックのようなもの。いろいろ組み合わせることができる。でも、どう使うかという発想が出てこない。IT企業でも「どう使ったらいい?」と聞かれたりする。大事なのは世界観で、プラットフォームはそれを支えるためのもの

塚崎:世界観ということでいうと、独裁者が必要だと思います。誰かが決めてそれに従うということが大切。過激ないいかがだけれど。日本の家電メーカーがなぜプラットフォームにならないのか?

塚崎:日本のメーカーは担当者が2,3年で変わってしまう。新しい担当者がきたときに、前の担当者がやったことは変えたくなってしまう。

塚崎:何か一例をこうやってつなげるんだということを見せないと広がっていかないと思う。ビジネスチャンスというと、人の目にするものは必ずメディアになっていく。(cnet_editorialはTwitterをつかっています!)


 7時間の講演を通じて感じたのは、それぞれの技術はすごいが、久夛良木氏や麻倉氏のようにネット家電の未来について、全体的にどのようなビジョンを描いているかが、今回の講演に見えなかったことだ。今、この技術は、将来こうなりますとか、いわば「マニフェスト」のようなものが必要だったような気がする。


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