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素人だから言えることもある

門外漢が考える商標登録の不思議

 あらかじめ、断っておくが、僕は、著作権とか商標登録に詳しいわけではない。だから、間違っていたら指摘して欲しい。

  ペコちゃん疑惑・フォト版で、おそらく誰もが疑問を抱くと思うのが、例えば、スペインのミス・パロミータは、不二家のペコちゃんをパクったのだから、ちゃんと不二家に商標権を明け渡すものだと思うだろう。ところが、そうはいかない。スペインできっちり、商標登録しているからだ。中国で、今、問題になっている「神戸牛」などの商標登録問題と同じである。法廷闘争をして勝ち目かあればいいが、何年もかかって勝てないなら、メーカーが大金をはたいて買い取るしかない。現在、不二家はスペインに進出していないので、あまり問題にならないのかもしれないが、スペインに進出するとするなら、不二家はミス・パロミータの商標を買い取らなければならない。何しろ、オークションで商標権をとり戻すのに712万ユーロもの金を払った相手である。そう簡単に引き下がるとは思えない。

 つまり、日本で商標登録するだけで、世界中に通用するわけではない。進出するすべての国の商標登録をしなければ名前すら決められないのである。例えば、日本でも起こった、iPhoneと補聴器のアイホン、iPadと富士通のiPadなど、これは日本国内の場合だが、おそらく発売決定までに世界中で大金が動いているに違いない。

 ソニーのWEGAの発売のときも同じようなことが起こった。本来、VEGAでうまくいくはずだったのに、それが不可能になったのだ。僕は、「WEGAがVEGAでなかった理由(テレビが壊れた・2) 」で、「ソニーの遺伝子—平面ブラウン管テレビ「ベガ」誕生物語に学ぶ商品関発の法則」(勝見明著/ダイヤモンド社)から、こんなエピソードを紹介した。

ドイツ語で「ベガ(織姫星)」を「WEGA」と綴るが、英語では「VEGA」となる。ところが、ソニーの知的財産部からの回答では、アメリカのある企業がすでに「VEGA」を商標登録しており、北米ではもちろん使えないし、日本でも「ベガ」は使えても「VEGA」は使えないというのだ。商標を買い取ることも不可能とわかった

(中略)

WEGA」はソニーが商標権を持っており問題なかったが、これでは英語圏の人間は「ヴェガ」と読む可能性が高い。日本の場合、そのつど、読みがなをふる方法もあるが、流通コミュニケーション上、はなはだ非効率だ。

暗礁に乗り上げたかと思ったところで、ここでも、追いつめられて知恵が出た。窮余の一策は、「W」を「V+V」に分け、「VV」にするというアイデアだった。


もともと「W(ダブリュー)」は「二つのU(ダブル・ユー)」の意味であり、フランス語では「ダブルヴェー」と発音して、まさに二つの「V(ヴェー)」だった。


「V」と「V」を横に少し重ねあわせ、一方の色のトーンを変えれば、英語圏の人にも「V」に見えるし、デザイン的にも、単なる「V」より逆に見た目のアクセントが強まり、パターン認識的に効果がある。

さらには、「Visual(ビジュアル)」+「Value(バリュー)」といった意味合いを持たせることも出来る。

商標上にも、「VEGA」とは別のものと扱われ、問題ないことがわかった。(勝見明著「ソニーの遺伝子—平面ブラウン管テレビ「ベガ」誕生物語に学ぶ商品関発の法則」ダイヤモンド社)

 つまり、WEGAとは、後づけの窮余の一策だった。どのような世界でも、こんなことは日常茶飯事であり、商標登録の世界でも世界中に支社を張り巡らせているソニーにおいてすらこんな状態だったのだ。

 また、ペコちゃん疑惑・フォト版のアメリカのバード・アイ社の広告を見て、あまりにもそっくりすぎる。いくら店頭の人形のデザインとしても、商標権侵害ではないかと言うものもいるかもしれない。それは、現代社会の感覚を当てはめているに過ぎない。

 しかし、60年前に日本に著作権の感覚が乏しかったのは、紛れもない事実である。オリンピックや万博で世界デビューする以前の日本、昭和30年代の日本は、現代の中国と同様のコピー天国であった。ようやく最近(平成10年5月)になって、特許庁よりペコちゃん人形こそが立体登録商標第一号として認められている。(ペコちゃん ポコちゃん 立体登録商標第一号に認定) 

 店頭用人形のデザインだから別物だというのは、あくまでも不二家側の論理である。もし、バード・アイ社が現在も、キャラクターの商標を使っていたとしたら、不二家に対し、アメリカでは、店頭用人形にデザインを限定され、パッケージにペコちゃんのキャラクターを使うことはまかりならんと言う法廷闘争になるかもしれない。そうなると、不二家は大金をはたいて商標を買い取ることになるだろう。それが正しいとか、正しくないとかの問題ではない。商標登録とは、最初に登録したもの勝ちの法律なのである。
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