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素人だから言えることもある

リスクゼロ企業ほどタダ乗り社員(フリーライダー)が多い

週刊「ダイヤモンド」の「解雇解禁」から

 前項「リスクゼロ社会の幻想」では、画期的な新発明ができない企業は、常に内向きな発想をすることを指摘した。それは、当然ながら社員の特質に現れている。僕は、その中で、
むしろ、自分の地位を守ることに汲々としている管理職こそ何の役にも立たないムダの骨頂だ。(リスクゼロ社会の幻想)
と書いたが、不思議なことに「週刊ダイヤモンド」の最新号である8月28日号では「解雇解禁 タダ乗り正社員をクビにせよ」という特集をしていた。その中で、「あなたの隣のタダ乗り社員」として4つのモデルケースについて解説があった。それが結構面白い。そこで、僕は、過去のエントリーと絡めて紹介したい。なお、フリーライダーとは、その項目の著者河合太介氏によると、
フリーライダーとは、「集団において、その集団が生み出す財の便益は享受するが、財の生産のためのコストを負わない者」をいう。簡単にいえば、会社という組織や、周りの頑張って働く社員に「ただのり」をする社員のことである。(週刊ダイヤモンド」8月28日号「解雇解禁 タダ乗り正社員をクビにせよ」34ページ/河合太介著「フリーライダーを見過ごせば企業はジワジワと衰退する」)
 リスクゼロ企業では、まず自らのリスクをできるだけゼロにしようと努力する社員が主流になっているのである。

第1象眼 アガリ型

代表例:一丁上がりベテラン系社員
行動特性
※(年功序列で)資格・役職的にはある程度のところまで出世している。
※自分から仕事は探さない、つくらない。
※自分のやらなくてはいけない仕事は最小限しかやらない。
※評論はするが、自分は動かない。
※責任が発生する類いのことは回避する。
※新しい仕事のやり方を覚えない。
※右から左に流して仕事をした気になっている。
※スピードが遅い。(週刊ダイヤモンド」8月28日号「解雇解禁 タダ乗り正社員をクビにせよ」32ページ「あなたの隣のタダ乗り社員」)
河合太介氏の解説
会社人生をすごろくにたとえた場合、すでにアガリを迎えているかのようなお気楽な仕事ぶりで、組織にぶら下がっている.タイプである。ドロンと組織に覆いかぶさっているせいで、下にいる若手が芽を出しにくいことから、一部では「粘土層」とも呼ばれているベテラン社員である。(週刊ダイヤモンド」8月28日号「解雇解禁 タダ乗り正社員をクビにせよ」34ページ/河合太介著「フリーライダーを見過ごせば企業はジワジワと衰退する」)
アガリ型は官僚型

 僕の過去のエントリーからは、官僚主義の特徴に酷似している事を指摘したい。

規則万能(例:規則に無いから出来ないという杓子定規の対応)、責任回避・自己保身、秘密主義、画一的傾向、権威主義的傾向(例:役所窓口などでの冷淡で横柄な対応)、繁文縟礼(はんぶんじょくれい)(例:膨大な処理済文書の保管を専門とする部署が存在すること)セクショナリズム(例:縦割り政治や専門外の業務を避けようとするなどの閉鎖的傾向)

これらは、一般に官僚主義と呼ばれているものである。例えば、先例がないからという理由で新しいことを回避しようとしたり、規則に示されていないから、上司に聞かなければわからないといったようなものから、書類を作り、保存すること自体が仕事と化してしまい、その書類が本当に必要であるかどうかは考慮されない(繁文縟礼)、自分たちの業務・専門以外のことやろうとせず、自分たちの領域に別の部署のものが関わってくるとそれを排除しようとする(セクショナリズム)、というような傾向を指し示している。(官僚制Wikipedia)(ワイドショー化とは何か(ワイドショー化する日本・5) )

第2象眼 成果・アイディア泥棒型

代表例:人の手柄横取り系社員
行動特性

※個人主義的である。
※自分で考えずに、安易に人に頼る。
※自分のために使える人は徹底的に使う。
※人が上げた成果を、さも自分が頑張った成果のように持っていく。
※手伝ったり、時間を使ったりしてもらっても、感謝しない。
※自分のほうが優位な相手には、威張った態度を取る。
※自分よりも上の者に対しては忠犬のようになる。
※自分の時間にはケチだが、人の時間を奪うことは平気である。(週刊ダイヤモンド」8月28日号「解雇解禁 タダ乗り正社員をクビにせよ」32ページ「あなたの隣のタダ乗り社員」)
河合太介氏の解説
結果主義的な成果主義の広がりで増えてきたフリーライダーである。自分の成績や出世のことしか頭にないタイプである。人のアイデアや成果をさも自分の手柄のようにして上司にアピールする術に長けている。(中略)契約社員や派遣社員といった立場の弱い人は、このタイプの正社員から餌食にされやすい。(週刊ダイヤモンド」8月28日号「解雇解禁 タダ乗り正社員をクビにせよ」34ページ/河合太介著「フリーライダーを見過ごせば企業はジワジワと衰退する」)
成果・アイデア泥棒型はジャーナリストもどき型

 僕の過去のエントリーからは、ジャーナリストもどきの特徴と酷似している。

 視聴者の耳目を集める企画をディレクターは提案したい。企画は前に書いたように仮説である。取材という検証を通じて初めて番組にすることができる。いわば番組に育てる前の芽のようなものだ。その前提が崩れた。
 仮説の検証の第一は、まず現場に行くことである。関係者の話を直接に取材しなければ何事も始まらないはずである。ところが、仮説を立てるものと検証する者が別々になってしまった。
 その結果、例えば、次のような過程で番組ができてしまう。
 はっきり言って、仮説を立てるだけなら現場に行くまでもない。インターネットで十分である。パソコンと向かい合ってネットサーフィンを繰り返す。おもしろそうな事柄が見つかったらコピー、ペースト、プリントアウトが溜まったら、それで仮説を書く。採択になるような文言をちりばめ企画書を書いて、提案する。大体企画を書く段階では、毎日の業務に追われて時間がないし、予算は付いていないし、現場に行って詳しく取材できない。それが口実になる。
 提案が採択になったら、下請けを選んで発注する。発注元は企画を仮説だとは言わない。仮設を定説のように示しがちだ。取材してみれば、仮説がまっとうだということが判明することもあるが、反対にとんでもないインチキと分かることもある。発注元はそれをしていない。
 実際取材する下請けの担当者はどうか。発注と下請けという力関係にアンバランスがあり、しかも仮設を定説としてこだわる発注元がいると、仮説が間違いと分かっても指摘しにくい。逆らって顔をつぶすことになっては、次の仕事に支障が出る。取材してみて間違いを発見するだけの能力と気持ちがあればまだいい。発注元に命じられたことを命じられたとおりに仕上げて「一丁あがり」にするほうが、波風が立たずに平和的に収まる。(小出五郎著「新・仮説の検証 沈黙のジャーナリズムに告ぐ」水曜社)( マスメディアは人から腐る)

第3象眼 クラッシャー型

代表例:自分の実力勘違い系社員
行動特性

※自分は「できている」と思っている。
※自分の仕事ぶりに関して悪い面を認めようとしない。
※自分の都合のよいように物事を解釈する。
※自分にとって都合の悪いことは記憶がすり替わっている。
※人とこだわる箇所が違い、そこに固執する。
※自分に厳しいフィードバックをする人に対して攻撃的になる。
※自分に対してはナイーブだが、人の感情には鈍感である。
※真剣にかかわった人を振り回して消耗させる。(週刊ダイヤモンド」8月28日号「解雇解禁 タダ乗り正社員をクビにせよ」32ページ「あなたの隣のタダ乗り社員」)
河合太介氏の解説
キレやすい人が増えてきた世の中で、企業の中にも目立つようになってきたフリーライダーである。「自分はできる」と思い込んでいるのだが、周囲の評価はまったく逆。仕事のやり方を改めてほしいと周囲は思っている。
 しかし、本人にその認識はなく、逆に自己過信が大きいので、人への態度が横柄・攻撃的であったり、けちをつけたりしてくる。人間関係のトラブルも起こしやすく、問題があるので注意をすると逆ギレして、全部人のせいにする
。かかわると大変だから、周囲も放置し始める。結果、組織にフリーライドしていられるタイプである。(週刊ダイヤモンド」8月28日号「解雇解禁 タダ乗り正社員をクビにせよ」34ページ/河合太介著「フリーライダーを見過ごせば企業はジワジワと衰退する」)
クラッシャー型は誇大自己症候群型

 このタイプは、政治家に多い誇大自己症候群に酷似している。

(1) 自分のこと、自分の関心のあることばかり話したがる。逆に、自分の事が話題になるのを極力避けようとする。
(2) 大げさな表現や大きなことを口にしたがる。ありふれたことではなく、普通の人が言いそうにないことを、さらっと言ったりする。意表をつくような、周囲があっというようなことをすることがある。どこか現実離れをした話をしたがる。
(3) 理屈っぽく、理詰めで話をする傾向がある。すぐに法律や専門的な知識を持ち出して、物事を論じようとする。話し方にも、自然な感情や思いやりに乏しい。逆に、感情を過度に煽るような、少し芝居がかったしゃべり方をする場合もある。
(4) 過度に丁寧だったり、過度に傲慢な態度をとる。最初は緊張が強く、よそよそしくて警戒的だが、いったん話し出すと、ぺらぺらとよく喋り、急になれなれしい態度をとる。まだ、よく知らないのに、過度に相手のことを理想化したり、褒めたりすることもある。
(5) 少しでも自分の言ったことにケチをつけられたり、軽くあしらうような言い方をされると、そこにこだわった反応を示したり、顔色が変わる。
(6) 自分のやり方にこだわりが強く、融通が利かない。物事の見方や関心、視野、活動領域、価値観が過度に固定し、それを広げようとしても強く抵抗する。潔癖で完全主義の傾向がみられる。
(7) 家族や身内を過度に理想化しているか、過度に嫌っている。友達に対しても、心から信頼するというよりも、どこか表面的だったり、自分の都合で相手を利用しようとする。
(8) 些細なことで機嫌を損ね、立腹する。そんなときは、普段とは全く別人のように、態度が豹変するのが特徴である。
(9) 気まぐれに、考えや決定がころころ変わる。だが、相手が決めることは好まず、自分が決定権を持とうとする。
(10) 相手によってひいきをしたり、態度が違う。従順で思い通りになる相手は、お気に入りであるが、自分の意思を持った存在には、批判的で激しく嫌う。(岡田尊司著「誇大自己症候群」ちくま新書)( 誰も小沢さんがわからない)

第4象眼 暗黒フォース型

代表例:相手のやる気削ぎ達人系社員
行動特性
※少しでも自分の負担が増えたり、面倒くさくなるような仕事の案に対しては、批判と揚げ足取りをしてつぶす、自分に降りかからないようにする。
※協力が必要な場面でも「それはうちの問題ではない」「僕の仕事ではない」と言って拒否する。
※部下が仕事の改善案を持ってきても放置。結論を催促されたら理由も述べずに「不採用」と通知。理由を尋ねられると「あれじゃダメだろ」と理由にならない理由で跳ね返す。
※ほめない、長所を見ない、短所をねちっこく攻める。(週刊ダイヤモンド」8月28日号「解雇解禁 タダ乗り正社員をクビにせよ」32ページ「あなたの隣のタダ乗り社員」)
河合太介氏の解説
組織にとって、変化・変革の際に見えない敵となるタイプである。現状維持を優先するため、負荷がかかって大変そうなことや、失敗のリスクがあることを「できない理由」を並べ立てて拒否する。自分だけがサボればいいのだが、挑戦しようとする部下や同僚の意気込みをつぶす。
 その結果、頑張ろうとする社員は自分の職場に無力感を覚えることになる。映画「スターウォーズ」の「ダークサイド」に引き込むような行動になぞらえて、暗黒フォース型と名づけている。(週刊ダイヤモンド」8月28日号「解雇解禁 タダ乗り正社員をクビにせよ」34ページ/河合太介著「フリーライダーを見過ごせば企業はジワジワと衰退する」)
暗黒フォース型は官僚型とジャーナリストもどきの複合型

 暗黒フォース型は、アガリ型のような個人的な仕事の拒絶ではなく、部下や仲間を巻き込み、平気で仲間を裏切るところなどは、まさにダースベイダーそのものである。過去のエントリーで言えば、上杉隆氏の「ジャーナリズム崩壊」(幻冬舎新書)にこんな例がある。

基本的にジャーナリストとして優れた記者は政治部では生き残りにくい。なぜなら、取材をすればするほど、担当する政治家の不利な情報まで知ることになってしまうからだ。仮に、そうして得た情報を読者や視聴者のために報じたらどうなるのだろうか。おそらく、その政治家は失脚し、同時に記者自身も社内で同じような災難が降りかかることになるだろう
 このように、政治記者にとって、取材し、優れた記事を出すことは、場合によっては「自殺行為」ともなり得る。こうしたことから政治記者にとって、担当する政治家への批判は必然的にタブーとなり、結果、ジャーナリストであることを放棄し、会社員としての生き方を選択することになる。
 つまり、オブザーバーではなく、政治に寄り添うプレイヤーになっていくのである。
 電話一本で、時の首相や官房長官までをも動かし、NHK人事に介入することが可能だった島桂次記者(のちに会長)や、田中派全盛期に同派を担当した海老沢勝二記者(同じくのちに会長)などがまさしくその典型である。そうした状況は現在でもあまり変わっていない。

(中略)

 彼らは、雑誌や社会部記者が政治家の身辺について取材し始めるのを察すると、すぐにその政治家に情報を与える。ときに、指南役として振る舞い、メディア対応の策を考えることもある。そしてそれでも敵わないとなると、なんとか取材を止めさせることができないか、社内の上層部に働きかけたり、場合によっては直接行動でもって、当の記者に圧力をかけることもあるのだ。(上杉隆著「ジャーナリズム崩壊」幻冬舎新書)(ブログ・ジャーナリズムは誕生するか)

このように、ジャーナリストとしての本分を忘れ、自らを政治家に寄り添う官僚となってしまう。官僚型とジャーナリストもどきの複合型と名づけたゆえんである。そして、彼らは政治家に恩義を売ったゆえんに、会長まで上り詰めていった。暗黒フォース型とは云い得て妙である。おそらく、このタイプは、自らのポストが一番大事なのかもしれない。
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