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素人だから言えることもある

マイクロソフトが任天堂やスクウェア買収まで画策したほどの、ソニーに対する危機感(ホームサーバの戦い・第9章)

前項「Xbox vs PS2(ホームサーバの戦い・第8章)」で見たとおり、マイクロソフトは、ソニーとのゲーム戦争に勝つために、スクウェア、任天堂、セガの買収をねらった。

 ゲーム業界という、マイクロソフトにとって初めての業界にもかかわらず、ソニーと戦う理由は何か? それはゲイツ氏が部下に言った言葉

ソニーはマイクロソフトと競いたがっている。PS2は、単なるテレビ用のセットトップボックスやゲーム機の枠に収まらないだろう。PCにとって脅威になるのは間違いない。(ディーン タカハシ著/元麻布 春男監修/永井 喜久子訳「マイクロソフトの蹉跌—プロジェクトXboxの真実」ソフトバンク)
に端的に現れている。そして、それは、マイクロソフトが目指している世界だからだ。僕は「茶の間の戦い」という稿でとりあげた「ゲーム業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本」(橘寛基著・秀和システム刊)の中にこんなことが書かれていたからである。
 マイクロソフトが家庭用ゲーム機に参入した背景には、創業者のビル・ゲイツ氏が「セットトップボックス」と呼んだコンセプトがあります。これはデジタル化し、オンライン化するテレビやAV機器など、家庭で楽しむエンターテイメントを統括するマシンで、近い将来、どこの家庭でも導入されるとゲイツ氏は主張していました。このいわばリビングのOSをウィンドウズ同様に掌握することが、マイクロソフトの狙いのようです。(橘寛基著「ゲーム業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本」秀和システム刊)
 マイクロソフトは、常に「PC後の時代」を考えていた。世界中のPCの90%はWindowsで独占したが、書斎から抜け出ることはできなかった。テレビのあるリビングのOSもこの手に入れなければ、完成されたとはいえない。そしてテレビに近いゲーム機のプレイステーションのOSはリナックスである。マイクロソフトにもゲーム部門もある。しかし、それはPC用ゲームであり、ゲーム専用のゲームではない。前項「Xbox vs PS2(ホームサーバの戦い・第8章)」で書いたように、
 彼は1999年にプレイステーション2(PS2)が発表されるよりずっと前に、ソニーのCEO出井伸之に、マイクロソフトのプログラミングツールを使ってほしいと持ちかけている。次に出るPS2用のゲームを作るのがこれで楽になると主張したが、出井は断った。(ディーン タカハシ著/元麻布 春男監修/永井 喜久子訳「マイクロソフトの蹉跌—プロジェクトXboxの真実」ソフトバンク)
 もちろん、PS2のOSもマイクロソフトで独占しようと考えたのである。だから、冒頭の
ソニーはマイクロソフトと競いたがっている。(ディーン タカハシ著/元麻布 春男監修/永井 喜久子訳「マイクロソフトの蹉跌—プロジェクトXboxの真実」ソフトバンク)
 という言葉が出たのだ。そのことがビル・ゲイツ氏に火をつけたといってもよい。これは、ある意味、プレイステーションが生まれた経緯と同じだ。
 初代プレイステーションの開発に着手する前、ソニーは任天堂と製造業務提携を結んでいた。ところが1991年、京都を本拠地とする任天堂は、ソニーを裏切って、突然フィリップと契約を結んでしまう。のちにプレイステーションの生みの親となった久夛良木は、冷水を浴びせられたような思いで、自分にゲーム機を作らせてほしいと進言した。当事ソニーのCEOであった大賀典雄も、同じく復讐に燃えていた。そして、議論が沸騰した製品選定会議の席上で、大賀は腕を振り回し、怒りもあらわに言い放った。「やれ!」ソニーに鼻であしらわれたビル・ゲイツも、きっと同じ思いだったに違いない。それから何年もたった後、今度はソニーが復讐される側になることは容易に想像がついた。(ディーン タカハシ著/元麻布 春男監修/永井 喜久子訳「マイクロソフトの蹉跌—プロジェクトXboxの真実」ソフトバンク)
 大賀氏が言ったのは「Do it!」というのが正解らしい。

 さて、PS3もXbox360も、ゲーマーに向かって「セットトップボックス」を作っているというのは禁句である。それは、

 MITで開かれたゲームサミットで、3DOのトリップ・ホーキンズは、ソニーのPS2のことを「トロイの木馬」と評した。ただのゲーム機のつもりで買うと、テレビ接続の通信端末やPCの役割をいつの間にか分捕って、エンタテインメントの主役に収まってしまうからだ。 (ディーン タカハシ著/元麻布 春男監修/永井 喜久子訳「マイクロソフトの蹉跌—プロジェクトXboxの真実」ソフトバンク)
という「トロイの木馬」だと思われるからである。PS3はかつての「エンタテイメントマシン」から「ゲーム機」へと名前を変えている。「マイクロソフトの蹉跌—プロジェクトXboxの真実」でも、スティーブ・バルマー
「我々はゲーム開発者にこう言いました。『なあ、多目的ボックスのアイディアがあるんだけど、PCとゲーム機とセットトップボックスをくつつけたようなやつだよ』」とバルマー。「彼らがなんて言ったでしょう?こう言ったんです。『そんなのやめちまえ、そいつのためにソフトなんて書いてやらないぞ』。我々は一年後にもう一度出直して言いました。『わかった。まずは、世界でいちばんすごいゲーム機を作ろうと思う』。すると彼らは答えました。『いいとも、話をしよう』。我々は、成功しなければならないとわかっています。しかし我々には、単なるゲーム機を超えた、よりいっそう大きなもくろみがあって、それをいつか追い求めることになるのです。これこそが我々の目指す目的地だと言えましょう。それとも、もっと大きな戦いがあるのでしょうか? もしそうしたものがあるのなら、我々はいつかそれに勝ちたいのです」(ディーン タカハシ著/元麻布 春男監修/永井 喜久子訳「マイクロソフトの蹉跌—プロジェクトXboxの真実」ソフトバンク)
いつ「トロイの木馬」の化けの皮がはがれるか、それはもうほとんどはがれているのだが。そしてゲーマーたちがそれを認めない限り、この戦いの勝者とはなれないのだ。
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