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素人だから言えることもある

意外に地デジ崩壊は近いかもしれない(ホームサーバの戦い・第77章)

というのは、読売新聞でこんな記事を読んだからだ。

BSで地デジ…総務省が緊急対策 アンテナ工事、間に合わなかったら…

総務省は27日、2011年7月の地上デジタル放送への完全移行時に、アンテナ工事などが間に合わない世帯が、BS(放送衛星)放送経由で地デジ番組を視聴できるようにする緊急対策を講じる方針を固めた。
BSアンテナとBSチューナーが接続されているのが前提となるため、BSアンテナなどを持っていない世帯に対しては別途、対応を検討する。
BS放送経由で視聴できる地デジ番組は、NHKと在京民放キー局のすべてとする。総務省は、デジタル化で電波が届かなくなる山間部など地デジを視聴できない世帯に対し、BS放送経由での視聴を15年3月まで可能とする移行措置を決めている。アンテナ工事が間に合わない世帯についても、同様の対応とする方針だ。総務省は、地デジ工事が間に合わない世帯が申請した場合に限り、BS放送経由で視聴できる地デジ番組にかけている暗号を解除し、アンテナ設置までの「時間稼ぎ」をする方向だ
すでに地デジが見られる世帯は今年3月現在で84%にとどまり、800万世帯以上が地デジ対応を終えていない計算になる。アナログ放送が停止する来年7月直前になると、工事が殺到する恐れもある。(2010年10月28日  読売新聞)

こんなことができるなら、初めからBSで流せばよいのではと考えるのではないだろうか。また、さかんにテレビで地デジ対策を呼びかけておきながら、結局、BS用のパラボラアンテナ工事をすればできるとしたら、何の意味があったのだろう。疑問を持つのも当然である。原因は、ただひとつ、地方民放を生き延びさせたいためだ。

新apple TVとtorneに見る日米録画事情(ホームサーバの戦い・第71章) でこんな言葉を引用した。

放送をネットで流すことへの抵抗感が行政にも色濃く残っているのも阻害要因だ。放送を県を超えて流してはならないという全く時代遅れの規制がそのまま残っていて、放送局はあぐらをかいたままだ。IPネットに流してやりさえすれば日本全国90%を超える世帯に番組を配信できる。1兆円を超えると言われる地デジ化投資のうち、全国くまなく電波を行き渡らせるための無駄な投資が一切なくなるはずなのに、それをしてしまったらせっかくのおいしい電波塔、アンテナ設置ビジネスが頓挫してしまうためやらせない。(Apple TVでテレビ番組配信83円! 日本はいまだ鎖国状態」) (登録必要)
また、地方民放抵抗の理由(ホームサーバの戦い・第72章) においても、
NHK や民放連は、IP や衛星は「補完的なインフラ」だとして、あくまでも地上波を主とする方針を表明している。これは、キー局の番組を垂れ流して電波料をもらっているだけで制作能力のない大部分の地方民放が、競争にさらされたら困るからである。(池田信夫著「新・電波利権」アゴラブックス/60・61ページ)
この地方民放に流れる電波料は、スポンサーが支払う金額のほぼ半分を占めている。つまり、BSで流せば、テレビ番組制作費はその半分でできることになる。民放各局は、現在、赤字であえいでいるが、地方民放を切り離せば、悠々と生き延びていける。だが、それをしないのは、政治とマスコミが癒着しているためである。
政治家も系列化された。地方民放は「政治家に作られた」といってもよいため、経営の実権を握っているのが経営者ではなく、政治家である例が多い。政治家にとって見れば、地方民放は資金源としては大したことはないが、「お国入り」をローカルニュースで扱ってくれるなど宣伝機関としては便利なのである。各県単位で地方民放の派閥ごとの配分が行われ、政治家も系列化された。(池田信夫著「新・電波利権」アゴラブックス/36ページ)
今回の新聞記事について池田信夫氏は、
この無駄づかいで地方民放がつぶれるのは自業自得だが、これによる電波の浪費は国民全体の損失だ。BSデジタルを2000年に始めたとき、地上波の放送をすべて衛星に移行しておけば、UHFとVHFの400MHz以上を空けることができ、日本は世界トップの無線ブロードバンド先進国になれたはずだ。これから地方民放が全滅すれば、10年ぐらいかけてそうなるだろう。日本の電波行政の「失われた20年」の代償は大きい。(地デジという壮大な無駄づかい)
と、地方民放がつぶれる事を予想している。今まで、キー局が作ってきた番組のCMをローカルスポンサーのCMに貼り替えて商売してきた地方民放は、視聴者の目を欺いてきたというしかない。もし、生き残ろうとするには番組制作力を付けなければならないが、キー局自身の番組制作力も
お笑い芸人かタレント(そうとしか呼べない職種)が近場というか、だいたい関東近県の「この街のうまい店」で「秘伝のタレ」を試食する。あるいはスタジオ内でゲームをする。無難なことをトークする。(テレビは今日も金太郎飴のタレント番組ばかり「報道番組」をつくらせてもらえない民放の記者たち)( ゲームもテレビも「失敗したくない病」(失敗を許さない国・2)
ばかりというのだから、先が見えている。

これからは、世界中のテレビ番組がどんどん入り込んでくる。ところが、テレビ局こそまさにガラパゴス状態。地デジ対策に1兆円も使うより、その資金で番組制作力を付けるべきだったのだ。そして海外に売れる番組を作るために。しかし、テレビ局自らが、電波免許に守られて何もしてこなかった。このつけが、結局、視聴者に回ってきたのである。(なお、地デジの始まりについては、地デジが生まれた本当の理由(読者ブログ版) 誰も語らない地デジの歴史参照)

追記 佐々木俊尚氏から、本エントリーについてツィートがありました。

来年7月に何が起きるのか。ますます面白くなってきた。 /意外に地デジ崩壊は近いかもしれない http://t.co/6j8cGA2(http://twitter.com/#!/sasakitoshinao/status/29412581964)

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